老麹が醸す甘い「バニリン」…泡盛古酒、琉球大と石川種麹の共同研究で論文賞


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共同研究の中心となった東京農業大助教の眞榮田麻友美さん(研究当時は琉球大農学部博士課程3年)(平良東紀教授提供)

 製造過程が一般の黒麹(こうじ)菌より長い「老麹」を使うと、泡盛古酒の甘い香りが増すことを明らかにした琉球大学と石川種麹店(北谷町)の共同研究論文「泡盛古酒香バニリンの生成メカニズムの解明」がこのほど、日本生物工学会の第29回生物工学論文賞を受賞した。

 研究は、「老麹」を用いることで、甘い香りの主成分となっているバニリンが増大することを証明。古酒製造には三日麹など老麹が適していると言われてきたことを裏付けた。

 共同研究者の一人、琉球大農学部の平良東紀教授は「学術的に評価されたことがうれしい」と喜んだ。石川種麹店の渡嘉敷建孝さんも「仕組みを解明し、評価されてよかった。今後もいい種麹を作って地元に貢献したい」と笑顔を見せた。

 共同研究は今年3月までに結果を出し、発酵分野で権威がある国際学術誌「ジャーナル・オブ・バイオサイエンス&バイオエンジニアリング」にすでに掲載されている。研究は、東京農業大の眞榮田麻友美助教(研究当時は琉球大農学部博士課程3年)を中心に、平良教授と、石川種麹店の渡嘉敷さんらで進めた。

共同研究者の平良東紀琉球大教授(中央)と石川種麹店の渡嘉敷建孝さん(右)、渡嘉敷正司さん=琉球大学

 香り成分は原料米の細胞壁に含まれるフェルラ酸が元となっていて、泡盛の醸造過程で4―ビニルグアヤコール(4―VG)に変わり、最終的にバニリンになる。研究ではフェルラ酸から4―VGへの変換に、黒麹菌の生産する酵素が寄与していることを明らかにした。老麹を使うことで4―VGが増えることも分かった。
 (嘉数陽)