「宮古島の養豚を守れ」高校生が挑んだ人工授精 「豚熱ピンチ」に立ち上がる


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出生報告会でうまれた子豚を抱いて紹介する生徒ら=11月30日、宮古島市平良の県立宮古総合実業高校第2農場

 【宮古島】宮古総合実業高校で、同校初の人工授精による豚12匹が生まれた。昨年、沖縄本島で発生した「豚熱」の影響で本島から種豚を導入できなくなった市内養豚農家を助けたいとの思いで、同校生物生産科2、3年生の18人が取り組んできた。生徒らは「島の養豚の課題が解決できる。持続可能な養豚実現へ。『ピンチをチャンスに』と力を合わせた」と声をそろえた。

 昨年12月、市内養豚農家から学校への相談が始まりだった。生徒らは豚熱で沖縄本島全ての豚にワクチンが接種され、宮古島に種豚を導入できなくなっている現状を知った。養豚農家が減少する宮古島では、島内の農家間で交配を続けると近親交配が進み、養豚が成り立たなくなる懸念も出ていた。

 課題解決には種豚の島内生産が必要と考え、授業で学んだ人工授精の知識と技術を活用することに決めた。宮古家畜保健衛生所とJAおきなわ養豚部の協力を得て研究に打ち込んだ。人工授精に必要な精液の購入先選定や品種の検討に始まり、雌の発情兆候の判断など難題が次々と降りかかった。

高校生らが人工授精で誕生させた豚=10月28日

 精液の購入先は岩手県の業者に決定。農家の希望を考慮し、足腰が強い品種にした。失敗のたびに生徒間で話し合い乗り越えた。今年10月28日、豚舎に生徒たちの努力の結晶が5匹、産声を上げた。11月1日には7匹と、品種の異なる母豚2匹から計12匹が誕生した。

 生徒らに協力したJA養豚部の眞壁倫世さんは「人工授精による種豚の生産は農家で取り組むには難しい点もある。農家が希望を持てる取り組みだ」と賛辞を贈った。

 子豚の飼育は2年生が引き継ぐ。2年の上里琉翔さんは「農家の経営が良くなるよう力を合わせて継続する」と誓った。
 (佐野真慈、写真も)