【深掘り】辺野古の設計変更は不承認なのに、国が土砂投入を続けるのはなぜ?


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 米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設を巡り、玉城デニー知事は11月25日、沖縄防衛局が軟弱地盤改良のために申請した設計変更を不承認とした。県は新基地建設の完成は見通せなくなったとして全ての工事を止めるよう求めているが、沖縄防衛局は設計変更に関わらない既存の埋め立て工事区域への土砂投入を続けている。防衛局が作業を止めず、代替施設の建設が進んでいるという既成事実を積み上げるのは、県民の諦めを誘いつつ、裁判闘争を有利に運ぶ狙いがあるとみられる。
 

■工事ありき

 防衛局は2013年に仲井真弘多元知事から埋め立て全体の承認を得た上で、18年12月に辺野古側の埋め立て予定地から土砂の投入を開始した。その後、大浦湾側に深刻な軟弱地盤が存在することを認め、改良工事を追加するための設計変更を玉城知事に申請。大浦湾側での工事を進めるには、玉城知事の承認が必須となる。

 玉城知事は不承認を発表した会見で「埋め立てが周辺環境に与える影響は甚大で、元に戻せない。無意味なものとなる可能性がある工事の継続は許されない」と述べ、現在進められる辺野古側での作業も含めて埋め立て工事の即時停止を主張した。

 だが、防衛局は、設計変更が生じない現行部分については、仲井真元知事から得た当初の承認に基づいて工事可能だとして、埋め立て作業を続行している。裁判では一般的に、既成事実を取り消すと不都合が生じると判断された場合には、行為の取り消しが認められない場合がある。目的達成のために手段を問わない「工事ありき」(県幹部)の姿勢が際立っている。
 

■行政指導へ

 沖縄防衛局は、県から設計変更不承認の通達を受けた翌26日に、新たな護岸「N2」を完成させた。県の審査中で設計変更の承認を得られていない8月の段階で、防衛局は護岸の建設工事を始めていた。土砂の陸揚げ場所を増やし、着手済みの区域での埋め立て作業を加速させたい考えだ。

 県は護岸を土砂の陸揚げに使うこと自体が約束違反だと指摘してきた。当初の設計では、護岸から土砂を陸揚げすることは想定されていないためだ。

 県はこれまでも土砂の陸揚げに護岸を使わないよう指導を繰り返してきたが、防衛局は指導に従わずに護岸を利用した陸揚げを続けてきた。N2を使い始めたことを受け、県は再び行政指導をする方向で準備を進めている。

 (明真南斗)