名護市長選どうなる?渡具知氏「中央政界とのパイプ強調」岸本氏「新基地反対を前面に」


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(左から)渡具知武豊氏、岸本洋平氏

 【名護】来年1月23日投開票の名護市長選に向けた動きが活発化している。2期目を目指す現職の渡具知武豊市長(60)、市議で新人の岸本洋平氏(48)が立候補を表明しており、一騎打ちとなる見通し。渡具知氏は事務所開きを大々的に実施し、菅義偉前首相との面談など中央政界とのパイプをアピール。政策発表を終えた岸本氏は、朝の手振りや地域の座談会など豊富な運動量で選挙活動を展開する。

 自民、公明が支援する渡具知氏は、2018年の前回市長選で、辺野古新基地反対でまとまる「オール沖縄」勢力の稲嶺進市長(当時)を破って初当選。06~10年に市長を務めた島袋吉和氏以来の保守市政を奪還した。島袋市政は1期で交代しただけに、自民側は「何が何でも2期目を狙う」と意気込む。

 岸本氏は、1998~2006年に市政を担った岸本建男氏(故人)を父に持つ。建男氏は99年に米軍普天間飛行場の辺野古移設の条件付き受け入れを表明した政治家だが、洋平氏は保守系無所属の市議として稲嶺市政を支えるなど、新基地反対の立場をとってきた。オール沖縄の支援を受け、新基地反対で市政奪還を目指す。

争点化避ける

 5日に行われた渡具知陣営の事務所開きでは、与党市議団や県議、国会議員、北部の首長など、多くの支援者が駆けつけた。渡具知氏は、基地政策に協力する自治体に交付される米軍再編交付金を活用して実現した子ども医療費・給食費・保育料の無償化などに触れ、「もっと輝く名護市を築いていく強い決意だ」と力を込めた。

 新基地建設の賛否を明確にせず、基地問題にほとんど言及しない渡具知氏だが、この日は「大変難しい問題だが、名護市の唯一の問題ではない。さまざまな問題がある」と訴えた。陣営関係者は「設計変更不承認など、辺野古が注目されているから触れざるを得なかったのでは」と話す。

 菅氏は、市長選で辺野古新基地建設問題は「争点にならない」と主張する。「医療や介護など身近な問題についての審判になる」と述べ、新基地建設の争点化を避ける姿勢だ。

交付金頼らず

 岸本陣営は8月下旬に選対事務所を構え、秋以降、地区ごとの後援会事務所などの設置で態勢づくりを加速させる。4日は市辺野古で久辺3区後援会の事務所開きがあり、岸本氏は「融和を図り笑顔あふれる名護市にしたい」と語った。

 前回市長選の稲嶺氏の敗因として、渡具知氏の無償化事業に「若い人が引っ張られた」との指摘が相次いだ。岸本氏は再編交付金に頼らず、市財源の無駄を省くことで無償を継続すると主張する。年間の再編交付金は市一般会計予算の1・5%に過ぎず、無償化に要するのは約6億7千万円であるとし「市予算で十分賄える」と語る。

 新基地へのスタンスを明確にせず、意見を述べない渡具知氏に対し、岸本陣営の関係者は「市長の責任放棄」との批判が市民の間にあることを挙げ、「前回同様、辺野古の『へ』の字も言わないなら、言わせてやろう」と強気の構えを見せた。
(喜屋武研伍、岩切美穂)