【記者解説】岸田首相「聞く力」沖縄は対象外? 振興策で揺さぶり露骨 所信表明


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岸田文雄首相(資料写真)

 岸田文雄首相は6日の所信表明演説で、外交・安全保障の課題として、米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設と共に「強い沖縄経済を作る」として新たな沖縄振興策の策定を位置づけた。「基地問題」と「沖縄振興」を露骨に結びつけた形だ。岸田氏の意図について、官邸幹部は「これまで国としてしっかり対応してきた沖縄振興をさらに進めるということだ」と述べるにとどめた。

 辺野古移設を巡っては玉城デニー知事が11月、沖縄防衛局による工事の設計変更申請を「不承認」としたばかりだ。玉城知事は全ての埋め立て工事の中止を求めている。

 政府は、2022年で復帰50年を迎える沖縄の新たな振興計画について、本年度で期限切れとなる沖縄振興特別措置法に替わる新法の制定など、新たな振興策策定の大詰めを迎えている。沖縄関係予算は、10年ぶりに3千億円台を割り込む公算が高く、国が辺野古移設を巡って、振興策という「アメ」で揺さぶりを掛けていると捉えられても仕方のない発言だ。

 岸田氏は、第1次内閣発足時に自身の「聞く力」を強調。今回の所信表明では「丁寧な説明、対話による信頼」を築くとした。しかし、政権発足後に相次いだ米軍による事故での対応では、米側へ毅然とした態度を求める県と県民の願いを聞き入れることはなかった。うわべだけの歩み寄りで信頼が生まれないことは自明だ。
 (安里洋輔)