「どんな時も守る」実子ではない6人を育て…養父母の思い出を本に 盲目の鍼灸師、点字でも


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沖縄点字図書館の玉城和也館長(右)と県立沖縄盲学校の村吉和枝校長(左)に出版した本を手渡す比嘉信子さん

 小学校卒業時に視力を失い、現在は鍼灸(しんきゅう)師として活動する比嘉信子さん(64)がこのほど、自身を含め実子ではない6人の子どもを育て上げた、父の新城安信さんと母の節さんとの思い出をつづった本「キラマンギ家族」を自費出版した。比嘉さんは「両親に感謝の気持ちを込めて出版した」と語った。本は県立盲学校や沖縄点字図書館に寄贈した。

 比嘉さんは竹富町黒島生まれ。実母が経済的に比嘉さんを育てるのが困難になったため、生後10ヵ月の時、実母の兄夫婦の安信さんと節さんの養子になった。安信さん、節さん夫婦は、他のおいやめいなどを迎え入れ、実子ではない子らと一緒に暮らした。

 比嘉さんは小学6年生の時、光を感じる視細胞が失われていく「網膜色素変性症」と診断された。小学校を卒業する頃には視力を喪失。その時、安信さんから「これから大変なことがあると思うが、どんな時でも信子を守るし、信子と一緒に闘う」と励まされ、この言葉が心の支えになったという。

 安信さんは2002年に、節さんは20年に亡くなった。節さんのお葬式の最中、一緒に育った兄・賢晃さんの息子から「じいじいとばあちゃんは、どこで知り合ったの」などさまざまなことを聞かれた。これをきっかけに、おいっこにも両親のことを知ってもらおうと、同書の執筆を始めた。

 「キラマンギ」は黒島の郷土料理。小麦粉をねって長さ3センチほどに刻んでゆでて、ニラと油で炒めたもの。比嘉さんにとって思い出深い味だ。比嘉さんは現在、鍼灸師をしながら専門学校で障がい者福祉を教え、ピアサポーターとしても活動している。

 11月14日には浦添市社会福祉センターで出版会が開かれた。点字と活字それぞれ販売しており、1冊千円。音声版も来年4月に販売を予定している。問い合わせは比嘉さん(電話)090(6856)4692。
 (狩俣悠喜)