〈86〉もったいない医療機器 医療者側の浸透課題も


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 沖縄県の医療において、あたらさーしないでもっと活用したらいいのに、というものが2つあります。

 まず1つは放射線治療です。実は沖縄県の放射線治療機器は主要各社の最新機器が揃っています。放射線治療医が常勤のほとんどの施設が最新型の装置を配備しており、また、そうではない他の施設も数年以内には最新型に更新予定です。最近の放射線治療装置は呼吸などで病変が移動しても追尾するシステムが入っていたり、複数箇所のピンポイント照射を同時に実施可能であったり、目を見張る発展を遂げています。

 人口比でいうと平均以上の整備率であるにも関わらず、沖縄県におけるがん患者さんが生涯で放射線治療を受ける割合は2割程度です。内地は平均3割に達します。疾患ごとに使い方はさまざまですが、手術とならぶ根治照射から、痛みをとる緩和照射まで適応範囲は広いのに、なんでかね~?と首をかしげる日々が続いております。

 もう1つは“おきなわ津梁ネットワーク”です。これは県医師会が主導する“私のカルテ”です。医師会のサーバーに皆さんの電子カルテが収納され、加入している病院で共同利用が可能です。もちろん加入前には“病院同士で利用する”ということに関して本人の同意が必要ですが、最近の新型コロナウイルス(COVID―19)の流行を見ていると、ここぞとばかりに活用したらいいのに、と感じております。

 例えば病院を受診する前に、医療従事者が受診する患者さんの津梁ネットワークを見ておけば、どんな病気を持っているか、何の薬を飲んでいて、検査結果がどうなっているかが一目瞭然です。

 病院で待たされる時間の短縮だったり、うっかり忘れていた大事な情報の確認だったりと、活用場面は様々です。また、意識不明の重症になっても、自分や家族のかわりに津梁ネットワークが自分のデータを提示してくれます。

 いざというときに大変便利なのですが、医療者側にもまだまだ浸透していないところが大きな課題です。じょーとーなIT機器を活用して、新型コロナ診療やその他の診療の補助になればいいのにと切に願っております。

(有賀拓郎、琉球大学病院 放射線科)