環境保全で持続的発展へ 琉球フォーラム・香坂玲氏(名古屋大学大学院教授)


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香坂 玲氏

 会員制の講演会組織「琉球フォーラム」(主宰・玻名城泰山琉球新報社長)の12月例会が8日、那覇市のダブルツリーbyヒルトン那覇首里城で開かれた。名古屋大学大学院環境学研究科教授の香坂玲氏が「沖縄から考える生物多様性~世界自然遺産登録、COP15から持続的な農林業まで」と題して講演した。今夏、世界自然遺産に登録された本島北部地域や西表島で、いかに環境保全と経済活動を両立していくのか、先行事例と比較しながら沖縄の可能性を検証した。

 香坂氏は、数ある遺産認証制度の中でもユネスコの世界遺産は国際的に認知度が高く、先例登録地でも観光客の誘致に絶大な影響力を発揮してきたと説明。観光立県の沖縄にとって「貴重な財産であり、起爆剤にもなり得る」と強調した。

香坂玲氏の講演を聞く琉球フォーラムの会員ら=8日午後、那覇市首里のダブルツリーbyヒルトン那覇首里城(又吉康秀撮影)

 遺産価値を維持するために不可欠な環境保全の活動について、世界的にも国家主体ではなく、企業や市民社会の役割が増加傾向にあるとし、「沖縄でも企業や市民が楽しみながら参加できる環境づくりが大切だ」と指摘した。

 遺産の利活用では、その土地ならではの体験や産品など付加価値を付ける地域ブランディング戦略や、地理的表示保護制度を活用した特産品の展開が有効だと提案した。香坂氏は「地元住民への還元も重要だ。環境保全を続けていくことが、地域社会の持続的な発展にもつながる」と述べた。
 (当銘千絵)