<書評>『OKINAWA FOOD&LIFE STORY 沖縄島料理』 あの名店、あの味の秘話


社会
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『OKINAWA FOOD&LIFE STORY 沖縄島料理』監修・写真 岡本尚文 文 たまきまさみ TWO VIRGINS・2090円

 この本は長く愛され続けている老舗の飲食店の歴史をオーナーや料理人に語ってもらうことで、その魅力を深く掘り下げて紹介している、いわば読ませる料理本だ。料理のレシピ集や味に定評のある飲食店のガイド本はいつの時代にも書店の棚をにぎわせるが、それらとはひと味もふた味も趣向を変えたこの「沖縄島料理」の本が今、県内で飛ぶように売れている。

 みんな知りたいのだと思う。素晴らしい琉球漆器ややちむんに美しく盛られた、家庭ではなかなか出せない繊細な味わいの琉球料理を出すあの名店が、いつどのような理由で誕生し、だれが、どういう思いでその味を継承し続けているのか。

 みんな読みたいのだと思う。今や県民だけではなく観光客にも名が知られるアメリカ世に創業した有名ステーキ店は、米軍のペイデイともなるとアメリカ兵で超満員になり、スタッフは英語で接客していた時代があったことを。

 ほかにも、だれもが知っているちんすこうのお店、100年近く続く豆腐屋、松尾の商店街の一角にひっそりとたたずむ、ナポリタンのおいしいジャズ喫茶、閉店してしまった首里の有名な沖縄そば屋の味を継承してますます有名になったそば屋、中華料理、食堂、カフェ、ハンバーガー店などのロングインタビューが全部で十店舗分あり、それぞれ読み応えがある。読者の方が訪ねたことのある飲食店も多くあるはずだが、料理を食べながらだと聞くことができない、歴史のあるお店ならではのエピソードを知ることができるのが、この本の最大の魅力だ。

 写真も面白い。料理の写真ももちろんあるが、お店の歴史を語ってくれた方々の仕事風景や笑顔、器や小物を含め、店内の雰囲気が伝わるようなカットが数多くちりばめられている。

 インタビューで紹介した店舗とは別に、北部や中部、那覇・南部とエリアごとに分けて紹介した飲食店もあり、この一冊に取り上げた店舗数は42軒。読めばきっと行きたくなるお店もあるはずだ。

 (長嶺哲成・居酒屋店主)


 おかもと・なおぶみ 1962年東京生まれ、写真家。写真集「沖縄02 アメリカの夜」や上間陽子「裸足で逃げる」表紙写真など。「沖縄島建築」が第6回沖縄書店大賞沖縄部門の準大賞に。