議会に女性や若手を増やすには?識者に聞く 久保慶明氏(琉大准教授)<壁をこえて 糸満市議選から>4


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琉球大・久保慶明准教授

 11月の糸満市議選では世代交代も顕著となった。平均年齢は54・42歳と改選前より4・62歳若返った。一方、改選後も50代以上の市議が過半数以上を占め、男女比も19対2で変わらない。多様な社会を反映する議員構成とするには何が課題か、必要な環境整備について琉球大の久保慶明准教授(政治学)に聞いた。

 ―年配の男性議員が多い。課題は何か。

 「議員になるルートが固定化している。地方議員の多くは退任するタイミングで後継者を探し始める。後継候補のほとんどはPTAや自治会など地域活動に参加し、適齢期になった男性だ。ベテラン議員の後任として、前職の固定票を維持したまま出馬するため、後継者は当選しやすくなる」

 ―後継者選びで取り組めることはあるか。

 「議会全体で、女性や若い世代を後継に選ぶことや外から呼び込むことを意識してほしい。今後は沖縄でも少子高齢化が進み、議員のなり手不足が予想される。そうなる前に地域や議会が一体となり、人材育成や外部人材のリクルートに取り組むことが大切だ」

 ―選挙制度に課題はあるか。

 「地方議員は兼業が認められている。しかし、実際は農家や自営業など時間に融通の利く職業の人が多い。会社員の兼業は少ない。会社員が立候補する場合、選挙運動や議員活動で会社に迷惑がかかるのではないかと本人も周囲も気にして、出馬時点で休業か退職を選択する。落選時には生活(収入)のリスクも伴う。議員活動をしながら働き続けられるような環境づくりが重要だ。そのためには雇用の仕組みも見直す必要がある」

 ―議会への関心を引きつけることで、市民が政治に参加しやすくなると思う。

 「学校生活の延長線上に議会があることを、子どもたちに伝えることが必要だ。誰でも、学校で起きた問題について教室で話し合い、決め事をした経験があるはず。それは議会とよく似ている。だが学校では政治や選挙の仕組みは学ぶ一方、政治を使って社会をどう変えられるかを学ぶ機会は不十分だ。教育やメディアの役割が重要だ」
 (聞き手・比嘉璃子)


 くぼ・よしあき 1983年、栃木県出身。筑波大学大学院卒。専門は政治学。著書に「現代日本のエリートの平等観―社会的格差と政治権力」(共著)など。