【識者談話】沖縄公庫存続、振興開発は長期的視点で 島袋伊津子・沖国大教授


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
島袋伊津子教授

 沖縄振興開発金融公庫の存続方針が示されたことは沖縄経済にとって歓迎すべきことだろう。沖縄公庫が日本政策金融公庫に統合されれば、民業移管に向けた改革の流れとして、果たしてきた役割を段階的に縮小せざるを得ないからだ。

 新型コロナ感染症の流行や軽石漂着といった外的要因に対し、沖縄経済が他の都道府県に比べて極めてぜい弱であることがあらためて浮き彫りとなった。

 民間の金融機関は激しい競争にさらされており、セーフティーネットとしての役割は過重な負担となる。コロナや軽石に対し、沖縄公庫はセーフティーネットとして民業を補完する役割を一定程度担っている。

 沖縄にはメガバンクが進出しておらず、沖縄公庫が地銀ではまかなえない資金需要をカバーしてきた。公庫はベンチャー企業にも投資していて、民間では厳しいリスクテークも取っている。離島が多いという特性もあり、民間が競争で離島や過疎地域から撤退する可能性もある。そうした点でも沖縄公庫はセーフティーネットの役割を果たしている。

 米統治下の影響で沖縄には貧困や低所得などが社会問題としてあり、観光以外の底堅い産業も育成しなければならない。経済指標を見ると沖縄は成熟しているとは言えない。振興開発は長期的に取り組む必要性がある。

 歴史や地理的特異性を考慮し、バラマキのような役割は慎みつつも、沖縄公庫の存続は長期的視点で配慮されるべきだろう。

 (金融論)