〈88〉子宮頸がんワクチン 副反応は2千人に1人


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 2021年2月に新しい子宮頸がんワクチン(9価ワクチン)が国内で販売開始となりました。子宮頸がんワクチンは、2価ワクチンと4価ワクチンが2013年に予防接種法における定期接種に指定されましたが、わずか2カ月後に厚生労働省は「積極的な接種勧奨を中止する」勧告を出しました。

 その後も定期接種であることに変わりはなく、小学校6年生から高校1年生相当の女子は現在でも公費で子宮頸がんワクチンを接種することができます。ですが通知が来ないために、このことを知らなかったという人が多いのが現状です。

 2020年10月に厚生労働省は、今度は「子宮頸がんワクチンの接種に関する情報提供を定期接種の対象者に対して行うように」と各自治体に向けて通知しました。これを受けて突然市町村から通知が届くようになり、「えっ? 結局打った方がいいの? 打たない方がいいの?」と混乱されて外来にいらっしゃる方がいます。そんな方に私が産婦人科医としてお伝えしている事実が2つあります。(1)以前子宮頸がんワクチンの副反応と考えられていた神経系のさまざまな症状は、現在ではワクチンを接種したこととは直接関係がないことがわかっていること(2)ワクチンを打たなければ、子宮頸がんにかかる人は75人に1人、一方ワクチンを打った場合に、一時的であったとしても医師や企業が重篤と判断するような副反応が出た人は2千人に1人だということです。

 ワクチン接種により子宮頸がん撲滅に向かっている諸外国とは反対に、接種率が極端に低い日本では、今後何万人もの女性が子宮頸がんにかかって、子宮や命を失うことになります。

 実はワクチンを打つべきか打たないべきかという議論はもう終わっています。これからは、接種勧奨の中止により定期接種の機会を失ってしまった女性のキャッチアップをどうやって行うか。さらに効果が高いとわかっている9価ワクチンは定期接種になっておらず、3回接種で6万円を超える自己負担です。経済的な格差が命の選別になりかねないという問題に私たちがどう立ち向かうかを社会で考える時期に来ています。

(直海玲、県立北部病院 産婦人科)