埋もれた歴史に光「緑の牢獄」「サンマデモクラシー」、「夢の残像」には等身大の同性愛者(名嘉山リサ・沖縄映画研究会事務局長)<年末回顧2021・映画>


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仲田幸子さん(左)が主演した映画「なんくるないさぁ」の一場面((C)2021沖縄ピクチャーズ)

 コロナ2年目の2021年も撮影や上映の制限があった中で、さまざまな沖縄を題材にした映画が公開された。県外でもヒットしたり、各種の賞を受賞したりする作品も多く、沖縄映画への注目度の高さがうかがえた。(受賞が必ずしも質の高さを保証するわけではないが)

 「なんくるないさぁ」は、出演者がウチナーンチュでウチナーグチの比重が高く、ほぼ全編字幕が付いた珍しいドタバタ劇。仲田幸子を主演に起用し、沖縄の特産品や観光地などが満載のいわば県産品映画。ステレオタイプ的なユタ描写や物語にあまり関係ないカチャーシーの多用などは残念だったが、なんくるないさの本当の意味は伝わっただろう。

 近年映画製作にもクラウドファンディングが浸透し、「なんくるないさぁ」をはじめ、「緑の牢獄」や「むんじゅる笠」もその恩恵を受けたようだ。「むんじゅる笠」はその作り方を紹介する映像の合間に、男性神人(かみんちゅ)の役割、戦争体験、戦後の苦労話などがバランスよく構成された民族誌(史)となっており、あまり知られていない(であろう)瀬底島の歴史や文化が垣間見えた。そのほかにも「夜明け前のうた」や「オキナワサントス」といったドキュメンタリー作品が公開され、埋もれていた歴史を掘り起こす作業が日々続けられていることに改めて気づかされた。

 「生きろ」は島田知事にかかわる証言や資料から、島田が沖縄戦で亡くなるまでの足跡をたどったドキュメンタリー。鑑賞後、島田が生きなかった意味が気になった。また2013年の報道ドラマ版と見比べてみたくなった。

 ロングラン上映中の「サンマデモクラシー」は、テンポよく観客を飽きさせない、エンターテインメント性の高い作品。裁判を起こしたウシさんのことをもっと知りたいと思ったが、大分前に鬼籍に入った一般女性が題材ではそれは難しいだろうか。

 沖縄国際映画祭では、今年も短編から長編まで多くの作品が上映された。中でも首里劇場を舞台にした「夢の残像」は、沖縄映画ではおそらく初めて、主役ではないものの等身大の女性の同性愛者が描かれた画期的な作品といえるだろう。多様性や他者の視点を認めようという直球のメッセージを声高に叫ばずともよくなる時代が早く来ることを願う。

 桜坂劇場では10月から12月にかけて、沖縄映画の特集が組まれていた。ソフト化されておらず、一般の観客が見ることが難しい作品も多いため、このような企画はありがたい。今後も期待したい。