続くコロナ不安、緊急宣言下で観光に打撃/軽石漂着、漁業関係など被害に <県内経済回顧2021>1


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 2021年も、新型コロナウイルスの感染拡大が猛威を振るった。観光産業は2年連続で夏場の稼ぎ時を失い、深刻な打撃を受けた。10月以降は感染状況が落ち着いたことで徐々に消費が活発化していたが、原油高に伴う電気やガソリン価格の高騰、世界的な供給網の混乱による原材料費の上昇などが経済回復にブレーキを掛け、直近ではオミクロン株の拡大が懸念されている。日本復帰50周年となる2022年を前に、沖縄経済の未来は不透明さを増している。苦境の続いた1年を振り返る。


緊急宣言下、観光に打撃 休業・時短、飲食も苦境に
 

緊急事態宣言の発令延長を受けて休業を続ける居酒屋=2月22日、那覇市内

 2021年も、新型コロナウイルスの感染拡大が基幹産業の観光を中心に沖縄経済に甚大な打撃を与えた。

 沖縄観光コンベンションビューローは、21年の入域観光客数はコロナ拡大前の19年比で7割減となる300万人と見通している。

 コロナの感染拡大が繰り返し、医療体制が逼迫(ひっぱく)したことから、飲食店への休業や時短営業要請などを主とした緊急事態宣言が繰り返された。緊急事態宣言とまん延防止等重点措置の期間を合計すると212日間となり、半分以上の期間に営業規制がかかるという異常事態となった。

 航空、宿泊、観光施設や土産物販売など、多くの観光関連業種が苦境に追い込まれている。長く飲食店や遊興施設への休業、時短営業要請が続いたことから、食材や酒類の生産、卸事業者などの痛手も大きい。

 金融支援の効果などで倒産は抑制されているが、感染収束後、借入資金の返済が始まる時に倒産が増加することを懸念する声も上がっている。

 (沖田有吾)


軽石漂着、全県に被害 出漁中止、旅行キャンセルも
 

軽石を避けて、港内の別の場所へ移動する漁船=11月8日、八重瀬町の港川漁港

 小笠原諸島の海底火山「福徳岡ノ場」で8月、噴火が起こった。10月上旬に大東島地方で軽石の漂着が確認され、その後、沖縄本島から宮古島、八重山地方へと県内各地に流れ着いている。港湾やビーチに大量の軽石が漂着するなど、漁業や観光業に深刻な被害が生じている。

 軽石を吸い上げたことによる漁船のエンジントラブルが相次ぎ、出漁できなくなる影響が出ている。県のまとめでは、被害漁船は合計154隻で、うち航行不能が34隻に上る。11月には、登録漁船の約52%に当たる1570隻が出漁を自粛する事態となり、水揚げが減少したことで魚の価格が上がり、県民の生活を圧迫した。養殖魚が軽石を飲み込んで死ぬ被害も生じた。

 ビーチを灰色の軽石が埋め尽くし、修学旅行や観光客の宿泊、マリンレジャーなどのキャンセルも発生した。現在も収束は見通せず、市町村議会で国や県に支援や補償を求める意見書が可決されている。

 (沖田有吾)