【記者解説】辺野古上告 沖縄県、国の強行手法に異議 訴えの一貫性優先


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 玉城デニー知事は、県の埋め立て承認撤回を取り消した国土交通相の裁決を不服とした抗告訴訟で、地裁に続いて県の訴えを門前払いとした高裁判決を受け入れず、最高裁に上告した。最高裁まで争って敗訴が確定した場合のリスクは大きく、上告しない戦略もあり得たが、国の強硬な手法に異議をとなえる姿勢の堅持を重視した。

 最高裁で逆転勝訴すれば、2018年の翁長県政による埋め立て承認の撤回が復活し、沖縄防衛局は工事を止めざるを得なくなる。一方、最高裁で県の敗訴が確定してしまうと、埋め立て工事の設計変更申請を不承認にした対応を巡って、県が訴訟に出にくくなることも想定される。

 県は11月25日、沖縄防衛局が申請していた設計変更を不承認とした。これに対し防衛省は、承認撤回の効力を取り消した際と同様に行政不服審査請求の制度を使い、内閣を構成する身内同士の手続きで不承認を取り消す対抗措置をとっている。

 今後、国交相が設計変更の不承認を取り消す裁決を下した場合は、県と国の間で新たな裁判に発展する可能性がある。

 ただ、承認撤回を巡る上告審で県が敗訴すると直近の判例となってしまい、新たな訴訟に打って出ても退けられる可能性が高くなる。司法の最終判断が来年の県知事選前に出る可能性もあり、政治日程を考慮すれば上告を見送る案もあった。

 ただ、県は高裁判決を批判してきた。上告を断念すれば、政治的に後退した印象が強くなる。埋め立ての予定海域のサンゴ移植を巡っても行政不服審査制度で県の決定が覆えされ、国の判断が優先される状態が続いている。県として訴えの一貫性を優先し、正攻法で上告した形だ。(明真南斗)