農相が県の処分を無効化 サンゴ移植許可撤回「緊急性ない」


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 名護市辺野古の新基地建設を巡って、沖縄防衛局が県のサンゴ移植許可撤回を不服とした審査請求に対し、金子原二郎農相は28日、県の移植許可撤回を違法として撤回を取り消した。

 農相は8月5日に、裁決までの間、県の許可撤回の執行停止を決め、沖縄防衛局は翌6日からサンゴ移植を再開した。今回、農相は県の移植許可撤回を正式に無効化した形になる。

 裁決書で(1)高水温期を避けるとした県の条件は7月末の移植を禁止していない(2)防衛局の移植は高水温や台風の影響に配慮している(3)緊急性はなく、県の聴聞省略は違法―などとし、県の許可撤回を取り消した。

 県の処分を取り消した裁決を受け、玉城デニー知事は28日にコメントを出し、「誠に残念だ。内閣の一員である農相の裁決が、公平・公正な判断とは到底いえない」と手続きを批判した。今後の対応については「裁決の内容を精査した上で、適切に対応する」とした。

 許可撤回が取り消されたのは、埋め立て区域の大浦湾側にある「J、P、K地区」の約3万9千群体分。

 防衛局は、「I地区」(約830群体)の許可撤回も審査請求をしていたが、執行停止中の8月11日に移植が終了していたことから、却下となった。

 沖縄防衛局はサンゴ移植を7月29日に始めた。県は高水温期の移植を避けるなどの条件から逸脱したとして、同30日に許可を撤回した。防衛局は8月2日、行政不服審査法に基づく審査請求と、裁決までの執行停止を農相に申し立てた。審査請求で防衛局は4回、県は3回、書面で正当性を主張した。