紅型をデジタル資産に NFT活用で職人の収益向上図る 知念紅型研究所と普及伝承コンソーシアム


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紅型デジタルデータの販売に取り組む知念紅型研究所十代目の知念冬馬さん(左)と、琉球びんがた普及伝承コンソーシアムの小渡晋治事務局長=24日、那覇市宇栄原の知念紅型研究所

 琉球びんがた普及伝承コンソーシアムは、知念紅型研究所十代目の知念冬馬さんの紅型作品を、1点もののデジタルデータとして販売する事業に取り組んでいる。紅型の本染めと型紙の画像データを、「非代替性トークン(NFT)」と呼ばれる複製不能なデジタル資産に加工し、オークション形式で取引する。

 オークションでの販売には仮想通貨「イーサリアム」が使われる。NFTアート作品が取引される市場「Foundation」に知念氏の本染め作品データを既に1点出品し、日本円で5万円程度という0・1イーサリアムで購入された。

 紅型はデジタル上でライセンス管理が追いついておらず、デザインデータが勝手に利用されるケースがあるという。デジタル上で1点ものとして価値をつけることで、知的財産を守る取り組みとなる。

 NFTはコンピューターで取引を監視する仕組み「ブロックチェーン」の技術を用い、取引履歴や作品の所有者などを把握できるため、他人がコピーできない固有のデータとして所有権が明確になる。

 購入者は、個人で楽しむ範囲でデザインを自由に使うことができ、転売する場合は利益の一部は制作者に入る仕組みとなっている。デジタルアートなどの世界で、NFTの取引が急速に広がっている。

 琉球びんがた普及伝承コンソーシアムは、約千点の紅型の本染めと型紙のデータを保存しており、今後これらのデータをNFT化してデジタル上で販売し、職人の収益につなげたい考え。

 知念さんは「手仕事に興味を持つきっかけになってほしい。今回の取り組みを前例として、県内の紅型業界でも広まったらいいと思う」と話した。

 (中村優希)