【図でわかる】沖縄が超少子高齢社会へ 過疎化が進む地域は?


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 国内では全人口の半数以上を65歳以上が占める「限界集落」と呼ばれる地域が出現するなど、自治体の消滅が危ぶまれている。他県に比べて沖縄はまだ過疎化が深刻ではないと思われがちだが、小規模離島や本島北部を中心に刻々と過疎化が進む。一方で本島中南部を中心に人口増も続いており、地域による「人口格差」が表れ始めている。

 小規模離島では限界集落に近づきつつある自治体も出てきた。周囲を海で閉ざされた島という性質上、高校進学には島を離れざるを得ず、陸続きの地域よりも生活コストが高いことなどが要因だ。少子高齢化が進む離島の高齢化率は全県平均を上回り、2025~40年にかけては全国平均よりも高くなる見込みだ。

 人口分布の二極化で過密となる本島中南部にも変化が見られる。20年国勢調査によると、県都那覇市の人口が20年ぶりに減り、周辺市町村で人口が増加。中心都市部で空洞化する「ドーナツ化」現象が起きている模様だ。

 那覇市を中心とした本島中南部都市圏への一極集中と、将来的な存続が危ぶまれる小規模離島などの人口流出。日本への復帰から50年を迎え、島々の営みをいかに持続可能なものにしていくか、県土の均衡ある発展の取り組みが問われる。(梅田正覚)

■国頭村 続く自然減・社会減

 沖縄本島最北の国頭村は人口の減少率が高い。村人口は第1次ベビーブームの団塊世代が出生した1950年の1万2000人をピークに、2020年国勢調査では復帰直前の1970年比で38.3%減の4517人まで落ち込んだ。国立社会保障・人口問題研究所の推計では2030年には3千人台となる見通しだ。
 過去30年間の人口動態はほとんどの年で自然減、社会減となり、少子高齢化は著しい。村は人口増に向けて宅地分譲などの取り組みを促進するものの、まとまった土地がなく、抜本的な打開策は見つかっていない。位牌(いはい)や仏壇を残して転出した住民も多く、空き家も多く点在している。
 村は地域と多様に関わる人々を指す「関係人口」を増やし、地域づくりの担い手の創出を目指す考えだ。(池田哲平)

■那覇市 中心市街地から流出

 那覇市は、中心市街地から郊外に人口が流れる「ドーナツ化現象」が指摘されている。2020年の国勢調査で那覇市の人口は31万7625人で、前回の15年調査と比べて1810人(0.6%)減っていた。00年調査以来の減少となった。
 中心市街地での人口減少について、市は19年に市議会での答弁で「ショッピングセンターなどの郊外化や長期的な高齢化や居住人口の減少」と説明していた。地価や建設費の高騰でマンションなどの分譲価格や家賃が高くなり、新たに住宅を求める人が郊外に向かっていることも指摘した。
 周辺市町村に居住して那覇市の中心市街地に通勤する「ベッドタウン」として、隣接する浦添市や豊見城市、南風原町などで人口が増えている。(明真南斗)

 

■渡名喜村 35年にも「限界集落」

 県高齢者保健福祉計画によると、県内41市町村で最も高齢化率が高い自治体は本島周辺離島の渡名喜村で、2019年の人口に占める65歳以上の高齢者の割合は44.1%を記録した。高齢化率が比較的高い離島町村の平均である27.6%をも大きく上回る。75歳以上の占める割合は25.6%で、島に暮らす4人に1人が後期高齢者となる。
 20年の国勢調査で渡名喜村の人口は県内最小の346人。高齢化率が50%を超える地域は「限界集落」と呼ばれるが、推計値では35年ごろに県内で最も早く限界集落に突入するとみられている。
 村はUIターン促進のため、村内に多数ある空き家の利活用に向けた計画策定を進めている。(梅田正覚)

■与那国町 自衛隊効果は未知数

 人口減少を食い止めようと、陸上自衛隊を誘致した与那国町の人口は横ばい傾向に推移している。10年前と比べた2020年の人口は19人増の1676人(男性923人、女性753人)と微増で、世帯数は47世帯増の760世帯だった。
 16年に配備された自衛隊の隊員やその家族の流入で人口減に一定の歯止めがかかったものの、同期間の出生数から死亡数を引いた「自然増減」はゼロだった。町によると、自衛隊関係者が町に定住した例はこれまでなく、自然増減には影響していない。
 今後はUIターン促進や自衛隊関係者を定住につなげるか、住民の出生数が増えるような子育て施策を充実させないと人口を維持し続けるのは難しい。
 自衛隊誘致は島を二分した住民投票を経て決まった。大きな代償を払った上で誘致したが、長期的な島の活性化につながるか否かは未知数だ。(梅田正覚)

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 沖縄は2022年5月、日本復帰から50年の節目を迎える。本土との経済格差が大きかった復帰当時は若者の流出などで人口の減少が起きると不安視する声もあったが、日本全体の人口が減少する中でも、沖縄県は現在まで一貫して人口増加を続けてきた。一方で少子高齢化や小規模離島の過疎化が進み、次の10年には沖縄全体でも人口減少に転じる予測も示されている。人口動態や将来推計値などのデータを用いて、復帰から50年を経た沖縄の姿を紹介する。