どうなる? 2022年沖縄経済 専門家が予想


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 新型コロナ感染症の猛威は2021年も続き、社会経済活動はさまざまな制約を受けてきた。それでも県内は感染予防策に取り組みながら、アフターコロナを見据え経済回復の道筋も見え始めている。2022年の沖縄経済がどこへ向かうのか、専門家の4氏に見通しを聞いた。(小波津智也)

 2022年の沖縄経済を予想したのは、日本銀行那覇支店の飯島浩太支店長、りゅうぎん総合研究所の武田智夫常務、おきぎん経済研究所の東川平信雄社長、海邦総研の新崎勝彦社長の4氏。

 21年と比較した経済成長率について、4氏ともに「やや伸びる」と予想した。緊急事態宣言が解除され、コロナの感染状況の沈静化や行動制限の緩和から回復に向かうとみている。

 分野別に見ると、観光業と雇用は上向きを見込んでおり、観光については飯島氏と新崎氏が「大きく伸びる」と予想した。消費は行動制限緩和による人流回復を追い風に3氏が「やや伸びる」とした。建設関連は飯島氏、東川平氏が「やや伸びる」と予想した。武田氏、新崎氏は「横ばい」と慎重な姿勢を示し、意見が分かれた。

 ただ、新型コロナウイルスの新変異株、オミクロン株が昨年末に国内で初確認されており、感染や重症化に関するリスクについて未解明な部分も多く不確実性が残る。いずれにしても感染抑制や観光客の受け入れ態勢が経済回復の鍵を握りそうだ。


感染抑制なら持ち直し 飯島浩太・日本銀行那覇支店長

キーワード:感染抑制が回復の前提

飯島浩太・日銀那覇支店長

 沖縄は、観光が基幹産業であるため、景気は新型コロナの感染状況に大きく依存する。県内経済は引き続き厳しい状況にあるが、昨秋以降、感染状況が落ち着くもとで、観光や外食を中心に持ち直しの動きがみられている。

 2022年を見通す際の最大の不確実性は、新型コロナの感染状況とその影響である。感染の抑制と経済活動の両立が、引き続き最大の課題である。その上で、先行きは、感染が抑制された状況が続くもとで、人々のマインドが改善していけば、本年の沖縄経済は、観光やサービス消費がドライバーとなって、持ち直しの動きが明確になっていくと予想される。

 政府の観光需要喚起策「Go Toトラベル」が再開されれば、観光の持ち直しに一段と弾みがつくだろう。マインドが改善すれば、これまで我慢していたサービス消費が想定以上に活気づく可能性もある。建設は、観光やサービス消費の持ち直しに伴い、受注が回復していくだろう。賃金を含め雇用の回復が明確になるのは、少し先になるだろう。


消費マインドの向上を予想 武田智夫・りゅうぎん総合研究所常務

キーワード:受け入れ体制の準備

武田智夫・りゅうぎん総合研究所常務

 新型コロナ感染症は、3度目のワクチン接種など医療体制の強化で沈静化が予想され、人流の回復が期待される。2021年は緊急事態宣言などで人流が止まったことを考えると、22年は県内経済にとって大きな転機になろう。

 消費関連、観光関連において持ち直しの動きが出て、県内経済は持ち直すことが予想される。ただ、観光業や飲食業などでの人材不足や、レンタカー業界の車両調達遅れなどの懸念がある。受け入れ態勢が整うに伴い持ち直しの動きは加速すると予想される。

 消費関連は、人流回復を背景に消費マインドが向上し、衣料品や身の回り品などの消費や飲食店など外食需要の回復が予想される。ただ、新車販売や家電販売などは部品の供給に懸念が残り、一部では伸び悩みが予想される。

 観光関連は、修学旅行や個人旅行など国内客を中心に回復することが予想される。ただ、人手不足など受け入れ態勢に懸念があり、整備が急がれる。

 建設関連は、公共工事が底堅く推移することが期待されるが、民間工事は資材価格・人件費・エネルギー価格上昇によるコスト増の懸念があることから、弱含むことが予想される。


行動制限の緩和で需要は堅調に 東川平信雄・おきぎん経済研究所社長

キーワード:経済活動本格化へ期待

東川平信雄・おきぎん経済研究所社長

 国内経済は、コロナ禍で停滞する社会経済活動の本格的な再開を目指し、これまでの自粛ムードから行動制限の緩和により景気回復への堅調な需要が見込める。

 県内経済は(1)世界的な供給網の目詰まりや商品価格高騰による物価上昇圧力の高まり(2)雇用回復(3)賃金上昇率―の動向などにより加速的な回復は見込めないが、観光関連を中心に経済活動の本格的な再開で緩やかながらも景気回復へ向かうものと予想する。合わせて感染抑制策や追加財政政策、需要喚起策などの対応も必要となる。

 観光関連は、行動制限の緩和で緩やかながら回復基調にある。経済活動回復の本格化が見込まれ、国内旅行需要は堅調に推移すると予想する。

 消費関連は、新変異株など感染拡大の懸念が払拭(ふっしょく)されれば、飲食、宿泊といったサービス消費のリベンジ需要などによって緩やかな回復を予想する。

 建設関連は、感染が抑制されることで公共投資が防衛関連を中心に底堅く推移し、民間投資は経済活動の再開に伴い建設資材の高騰、人手不足など懸念材料があるものの緩やかな持ち直しの動きを予想する。


観光喚起でV字回復に期待 新崎勝彦・海邦総研社長

キーワード:受け皿再構築、待ったなし

新崎勝彦・海邦総研社長

 公的機関と企業、県民はこの2年間で、新型コロナウイルス感染症を一定程度、抑え込むノウハウを蓄積してきた。ことしは前進の年となる公算が大きい。

 個人消費について、コロナ禍で消費の機会が減った反動から来る「リベンジ消費」は本年も続き、緩やかに回復するだろう。

 建設は、企業の設備投資が活発化していくと期待できる。落ち込みが大きい住宅建設は、家計におけるコロナ再拡大への不安感を解消させる必要があり、回復に時間を要すると考えられる。

 新型コロナの感染状況が2021年秋以降と同じ水準にとどまるのであれば、観光は市場回復と喚起策との相乗効果で、V字回復する期待がある。最も大きな課題は「旅行サービスの供給量をいかに回復させるか」だろう。人員やレンタカーなど受け皿の再構築は待ったなしの状況だ。

 雇用情勢は、雇用調整助成金制度など各種施策が奏功し、全体としては一定水準を維持できている。支援策の終了後、企業が雇用を維持できるか、正念場の年になるだろう。