助け合いを意味する「ゆいまーる」に象徴される地域の緊密な人間関係は、一層希薄化が進んでいる。琉球新報の2021年県民意識調査で「隣近所との付き合い」では、「とても盛ん」が初めて10%を割り6・1%、「挨拶(あいさつ)程度」が初めて5割を超えて多数派となった。20代で「まったくない」が20%に達するなど、若年層ほど希薄化が顕著だった。一方、価値観が多様化する中で調査だけではつかみ取れない人々のつながりが見えてきた。
「若者は別のつながりがある」と語るのは琉球大学の喜納育江教授(54)。若年層は同世代や価値観が合う人などと固まる傾向がみられるという。そのため、今回の調査では見えてこないSNSなどの“外の世界”でつながっていると指摘する。同時にライフサイクルの関係で、高齢になれば地域とのつながりが強まる可能性も示唆した。
模合参加者も一気に3割を切り、「していない」が5割を超えた。この質問でも若年層ほど不参加者が多く、参加者は20代で12・0%、30代は16・7%にとどまった。
まちづくりファシリテーターの石垣綾音さん(31)は模合に参加したことがなく、同世代の親族で参加しているのも1人だという。飲み会にも参加するし、まちづくり関係のつながりで本をシェアするグループはあるが、模合については「必要性を感じない」と淡々と語る。
石垣さんも人間関係の変化について価値観の多様化を指摘。新型コロナウイルスの影響も挙げ、隣近所との付き合いを例に「『挨拶程度でいい』と思っているかも」として、次回以降で変化するかに着目した。一方、新興住宅地や昔ながらの集落によっても違いがある可能性も示した。
地域行事や祭りは参加しない人が「あまり」「まったく」を合わせると過半数の53・7%に達したが、ここでは地域別の差が大きく、石垣は参加者が過半数、北部、宮古も参加すると答えた人が比較的多かった。隣近所との付き合いでも3地域は比較的強い傾向がみられた。
ただ、地域の人間関係が希薄になっているのが現実だ。背景には特定の価値観を同じくする人とのつながりがより重視される傾向がある。だが、社会の諸課題はあらゆるところで複雑に絡む。喜納教授は「異なる考えに触れることは現代社会の問題を考える知恵になる」とも語る。沖縄のあらゆる問題は、人々の多様なつながりが解決のヒントを与えるかもしれない。
(仲村良太)