児相、里子一時保護 提訴後、里親から引き取る


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里子が乗る車をのぞき込み、名前を呼ぶ里親の小橋川久美子さんと、離れて見守る学さん(左)=4日午後、那覇市

 生後2カ月から養育している児童(5)の里親委託を児童相談所が一方的に解除し、里親から引き離すのは、里子に大きな精神的ダメージを与える違法な対応だとして、那覇市の50代夫妻が県を相手取り、引き渡しの差し止めを求めた訴訟を巡り、コザ児童相談所は4日、児童を里親宅から引き取り、一時保護した。児童福祉法上、里親委託は親権者の同意が必要で、実親が委託の同意を撤回していた。

 里親は小橋川学さん(56)、久美子さん(55)夫妻。小橋川さん側によると、児童は5年以上、夫妻の下で育った。発達障がいがあり、医師の助言もあって、実親ではないと知らせる「真実告知」をしていない。

 代理人の川津知大弁護士は、児童の特性を考え、告知や面会に時間をかけて引き渡すべきだと指摘。実親の同意が撤回され、一時保護がやむを得ないとしても、引き続き委託先を小橋川さんにできると主張していた。児童が引き渡されたことを受け、引き渡し差し止めを求める訴訟は、訴えが退けられる見込みだという。

 午後4時半すぎ、児相職員が小橋川さん宅に到着。里親委託の解除を通知する書面を小橋川さんに手渡した。児童は久美子さんにしがみついて離れようとしなかったが、車に乗せられ、一時保護所へ向かった。久美子さんは「あの子が今夜どんなふうに過ごすか、この先どうなるのかと考えると、言葉にできない」と泣き崩れた。

 児相の担当者は「基本的に個別案件には、答える立場ではない」とした上で、提訴後も引き渡しの時期を変更しなかった理由について「以前から決まっていた内容で保護したという流れで、それ以上言えるものはない」と述べた。