【全文】玉城デニー知事の年頭あいさつ 復帰50年、基地、貧困、軽石、コロナ対策…(2022年1月4日)


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年頭あいさつをする玉城デニー知事=1月4日

 沖縄県の玉城デニー知事は1月4日、県庁で職員に向けた2022年の年頭あいさつをし、沖縄の日本復帰50年に当たって「県民のさまざまな意見も取り入れながら、今後の建議・宣言のあり方についても検討していく」などと語った。全文は次の通り。

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 はいさい、ぐすーよー、いーそーがちでーびる。職員の皆さん、明けましておめでとうございます。県知事の玉城デニーです。令和4年度新春を職員の皆さんと共に迎えることができましたことも、心より感謝申し上げます。 また、皆さまにおかれましても、ご家族ともども心健やかに新春をお迎えのこととお喜び申し上げます。

 私が県知事に就任してから3年と3カ月が経過いたしました。任期4年目の新年を迎え、多くの県民の皆さんの期待に応えられるよう、県政運営に邁進するべく、心を新たにしているところであります。私はこれまで公約に掲げた「新時代沖縄の到来」「誇りある豊かさ」「沖縄らしい優しい社会の構築」の三つの視点から、県民所得の向上や基地負担の軽減をはじめ、経済、文化、教育、福祉、保健医療などあらゆる分野の課題解決に向けて全力で取り組んでまいりました。

 この間、さまざまな課題に直面しながらも、着実に業務を進めることができましたのは、各部局長のもと、職員の皆さんが日々の業務に誠実に取り組んでいただいたおかげであり、改めて感謝を申し上げます。

 さて、昨年を振り返りますと、一年を通して新型コロナウイルス感染対策に追われる日々でありました。また、小笠原諸島の海底火山の噴火により発生した軽石が10月ごろから沖縄県内にも漂着し、水産業などに大きな被害が生じるなど、例年にも増して困難に見舞われた一年であったと思います。

 一昨年の2月14日に、県内感染者が初めて確認されてから2年が経過しようとしております。この間、県民の生命と健康を守るためのコロナウイルスの感染防止対策と県民の生活と県経済を立て直すための経済対策に全力で取り組んでまいりました。昨年は緊急事態宣言が長期化し、不要不急の外出自粛や移動の制限をお願いするなど、県民の皆さまに非常にご苦労をお掛けしましたが、感染防止対策やワクチン接種への県民の皆さんや医療従事者の方々のご協力により、感染状況が改善され、医療提供体制も回復させることができました。

 しかし、米軍基地に起因するオミクロン株の市中への感染が拡大し、現在、その対応に追われているところでもあります。これからも感染防止対策を講じつつ、深刻な影響を受けた県民生活や県経済の早期回復に向けて、職員の皆さんと一緒に取り組んでまいりたいと思いますのでどうぞ引き続きよろしくお願いいたします。

 昨年の8月に小笠原諸島の近海の福徳岡ノ場(ふくとくおかのば)の海底火山で大量の軽石を噴出する大規模な噴火が発生いたしました。10月初旬頃には南北大東島に漂着しているのが確認され、その後、沖縄本島や宮古、八重山など、県内全域で確認されるようになりました。軽石の漂着により、漁船やフェリー、海上保安庁の巡視船などの船舶にエンジントラブルが発生し、航行不能になるなどの影響も出ています。また、養殖魚などが斃死(へいし)するなど、県内の水産業にも大きな影響が出ています。

 漁業関係者や観光関係者、そして、多くの民間ボランティアの方々の協力により撤去作業も進められていますが、場所によっては、漂流と消失を繰り返しているため、終わりが見えないという状況が続いています。収束するまでにはしばらく時間がかかり、長期的な対応が必要になってくると思われます。今後は、国や関係機関と連携しながら、回収作業や利活用などを進めてまいります。

 昨年は東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会が開催され、県出身選手が素晴らしい活躍を見せてくれました。県勢では、個人では初のメダリストとなったレスリング銅メダルの屋比久選手、空手の喜友名選手と野球の平良選手はともに金メダルを獲得しました。また、2個の銅メダルを獲得した陸上男子パラリンピックの上与那原選手等、その他、県出身者の皆さんも素晴らしいプレーで県民に勇気と感動を与えてくれました本当にありがとうございました。

 そのほかにも、ユネスコに推薦していた奄美大島、徳之島、沖縄島北部および西表島が7月に世界自然遺産への登録が決定、そして毎年11月1日を「琉球歴史文化の日」として制定し、そのほかにも、「SDGs未来都市及び自治体SDGsモデル事業への選定、中学生のバス・モノレール通学費の無料化開始などさまざまな取り組み、出来事などがありました。

 沖縄県は、本年5月15日に本土復帰50周年を迎えます。1971年11月に作成された「復帰措置に関する建議書」は県民の福祉を優先的に考え、地方自治の確立、反戦平和、基本的人権の確立、県民本位の経済開発などを骨組みとする新生沖縄像を描いています。

 復帰50周年を迎え、県民のさまざまな意見も取り入れながら、1971年の建議書で求めた新生沖縄像と、そして現状との比較検証を行い、今後の建議・宣言のあり方についても検討してまいります。

 また、大きな節目にあたり、美ら島沖縄文化祭2022の実施や、沖縄復帰50周年記念式典などを開催いたします。さらに、第7回世界のウチナーンチュ大会開催も予定していることから、県内はもとより、国内外に向けて、さまざまな分野で復帰50周年事業として推進してまいります。

 新型コロナウイルス感染症の影響により、本県の社会・経済は大変厳しい状況にあります。特に、入域観光客数は過去最大の落ち込みとなり、個人消費や雇用情勢も悪化しています。県民の生活を支えるために、それらの支援に取り組むとともに、事業所向けの雇用支援など、各種の施策を展開してまいります。琉球歴史文化の日などを中心に、沖縄の歴史と文化への理解を深めるとともに、しまくとぅばの保存・普及・継承、組踊、三線音楽、琉球舞踊などの担い手の育成、伝統工芸産業を継承する人材育成など多様で豊かな沖縄文化を守り、支え、育むための取り組みを推進してまいります。

 また、デジタル社会に対応した強い経済構造の実現をめざし、リゾテック沖縄の推進によるDX、デジタルトランスフォーメーションの取り組みを官民挙げて推進し、産業の高度化や労働生産性の向上を図ってまいります。そして、県内で生産可能な製品や、提供可能なサービスは、可能な限り県内で調達するなど、獲得した所得を地域内に循環させ、県内企業の「稼ぐ力を」強化してまいります。

 県政の重要なテーマである子どもの貧困問題については、貧困の連鎖を断ち切り、生まれ育った環境に左右されることなく、夢や希望って成長していける社会の実現を目指し、あらゆる角度から切れ目のない政策を実施します。また国では子どもに関するさまざまな課題に総合的に対応するため、新たな行政組織を令和5年度に創設するということを目指しているとのことです。県においても、国の動向を注視しながら情報収集に努め適切に対応できるよう取り組んでまいります。

 加えて依然として米軍人・軍属による事件、基地に起因する事故、騒音、水質汚染など環境問題が後を絶ちません。本土復帰50年という大きな節目を迎える年、目に見える形での在沖米軍基地の一層の整理縮小や日米地位協定の見直し、沖縄の過重な基地負担の軽減を政府に求めていくとともに、基地から派生する諸問題の解決に全力で取り組んでまいります。

 職員の皆さんにおかれましては、県民全体の奉仕者としての責務を心がけ、誰一人取り残さない社会を実現するために、県民の期待に応えていただくようよろしくお願いいたします。また、通常の業務に加え、ここ2年ほどは、新型コロナウイルス感染症対策に日々頑張っていただいていることと思いますが、くれぐれもご自身の健康管理にも十分ご留意ください。そして、仕事と私生活のオンとオフを上手に切り換えていただきながら、充実した毎日を過ごし、素晴らしい1年にしていただきたいと思います。

 結びに、新しい年が皆さんにとって素晴らしい年となりますとともに、ご家族の皆さまのご健勝とご多幸を祈念申し上げ、年頭のご挨拶とさせていただきます。

くとぅしん、ゆたさるぐとぅにうにげーさびら。
今年もよろしくお願いいたします。

まじゅん、ちばてぃいちゃびらなやーさい。
一緒に頑張ってまいりましょう。

いっぺーにふぇーでーびる。
大変ありがとうございます。