〈89〉新型コロナの転換点 予防・診断・治療が3本柱


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 新型コロナウイルスの世界的な流行と、その対策に追われる生活が続いて2年がたとうとしています。しかしこのウイルスにおびえることのない、かつての生活を取り戻すにはまだ至っておりません。

 ではどこまで対策が進めば、私たちはかつての生活に戻れるのでしょうか? 私見ではありますが、「インフルエンザと同じように、この新型コロナウイルスを扱えるようになる」がわかりやすい目安です。具体的には(1)予防、(2)診断、(3)治療が3本柱となります。

 具体的にインフルエンザの歴史を振り返ってみましょう。インフルエンザに対しては、1972年には現行のワクチンが実用化されていました。

 副作用も少なく、安全性の高いものであるという評価はありましたが、いろいろな誤解や不安からワクチン接種は進まず、インフルエンザ対策は停滞してしまいました。

 その後、1999年に迅速診断キットが開発され、さらに待望の治療薬として2001年にタミフル(一般名オセルタミビル)が日本でも発売されました。これによりインフルエンザの迅速な診断および適切な治療、予防内服といった対応が地域の診療所でも行えるようになり、その脅威は小さくなりました。

 この下地があったからこそ、2009年に発生し重症化が懸念された新型インフルエンザも抑え込めたものと考えられます(この新型インフルエンザは、その後「季節性のインフルエンザ」として世界中で毎年流行しています)。

 では新型コロナウイルスに関しては現在どうでしょうか?

 診断には遺伝子学的検査(PCR検査)、あるいは迅速抗原検査を用い、治療には専門病院での入院加療を原則としつつ、経口薬の導入が期待されています。

 そして予防に関しては、世界中で新型コロナウイルスワクチンの接種がかつてない急ピッチで進み、継続されていることは皆さんご存じだと思います。これは重症化を防ぎ、また発症および流行の抑制が期待できます。自身と周囲の大切な方々を守ることにつながります。

 各個人でできることは限られていますが、根気強く、かつての生活を取り戻すための一歩を続けていきましょう!

(上若生、国立療養所沖縄愛楽園、内科)