過労で脳出血に…人工透析患者のパティシエ、ゴルフ場でデザートを提供するまで


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フルーツたっぷりのショートケーキを作る山城光一さん=12月24日、南城市知念知名の「守礼カントリークラブ」

 【南城】南城市知念知名のゴルフ場「守礼カントリークラブ」のレストランにこのほど、本格的なデザートメニューが誕生した。フルーツたっぷりのショートケーキや抹茶のタルト、ドーナツ、トリュフなど、色とりどりのデザートが並ぶ。腕を振るうのはパティシエとして働く人工透析患者の山城光一さん(44)。「ゴルフを楽しみながら、おいしいデザートも堪能してほしい」とPRする。

 同市佐敷出身の山城さんはパティシエを目指して、高校卒業後、神奈川県横浜市の新横浜プリンスホテルの調理場に勤め、11年間デザート担当として腕を磨いた。「最初のころは調理場の中でフランス語が飛び交い、洋菓子の名前も全く分からなかったので、必死に勉強した」と振り返る。

 その後、川崎市の洋菓子店で働くが、2011年に長時間労働による過労で体調を崩し、脳出血で倒れ、右半身不随になった。「医師からは過労で死んでもおかしくないと言われた。後遺症を患うとも言われたが、2カ月間のリハビリを耐え、右手右足を動かせることができた」

 山城さんはその後沖縄へと帰郷。脳出血と同時に腎機能障害も併発し、人工透析を週3回受けている。最初は「パティシエを辞めよう」とまで考えたが、菓子作りへの思いが強く、県内のホテルに勤務し、さまざまなデザートを作った。

 守礼カントリークラブの調理課チーフ・當眞嗣文さん(38)から声を掛けられ、昨年4月から同クラブのレストランで勤務する。レストランでは洗い物や下ごしらえの業務の合間に創作デザートを手掛ける。當眞さんは「山城さんが作るデザートは、味も見映えも素晴らしい。デザートのメニューを出すことで、ゴルファーだけでなく、女性や家族連れのお客さまも足を運んでくれたら」と期待する。

 昨年12月のクリスマスシーズンには予約制でケーキなどを作った。「お客さまの喜ぶ笑顔を見ることで(パティシエとしての)やりがいを感じる。これからもお客さまの想像を超えたデザートを作りたい」と前向きに話した。

 (金城実倫)