<書評>『つながる 沖縄近現代史』 現代っ子が沖縄史を「冒険」したら


社会
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『つながる 沖縄近現代史』前田勇樹、古波藏契、秋山道宏編 ボーダーインク・2420円

 いよいよこんな本が登場! 例えば「復帰」の気配だけでも知っている私たち世代は、それが歴史上どんな重要な意味があるかわからないにしてもリアルタイムで「知っている」。思い出があるからだ。では沖縄戦は? それは生まれる前のことだから「知らない」。琉球王国時代はなおさら遠い時代の本の中。ただ目に見えるもの見えないものが、私たちの生活の中に残る。

 これは自分の立つ地軸から経験しえない時代をもはっきり知っておきたいと考える真面目な冒険家たち(研究者)が、一生懸命研究を積み上げてくださった本だ。しかも受験時の参考書のように点を線や面につなげるような配慮で分かりやすい。近世琉球・近代沖縄・戦後沖縄の時代区分で歴史を立体的に解説し、関連のある事項にフラグやコラムのおまけ、参考文献紹介サービスと充実した親切設計。しかも「歴史を過去に固定せず、未来への展望のために現在の問題や課題と結びつけて考え続けなければ」ということを随所で指摘している。

 着実な研究は体験者をも超えるというと語弊があるだろうか。体験者が「見聞きしたもの、やったこと」に非体験の研究者が「なぜ」で解説をして裏付けし、見落としがちな歴史の隙間にも視線を導いてくれる。では体験者や当事者の「怒り、苦しみ、悲しみ」あるいは「希望、誇り」などの感情はどうだろう。目には見えないが私たちの社会には、それを共有してこそ理解できることがあまりにも多い。それも本書は事例を挙げて解説し、問題や課題を提供してくれる頼もしさ。

 「歴史戦」という表現を初めて目にした。「歴史観の深みや質が問われる」という意味で、私たちは歴史を何から、誰からどう学び、自分の生き方につなげるかという命題も含む進化した歴史学習の入門書だ。

 知っていたつもりの歴史の確認でもいい、近現代の沖縄を知りたいなら一番手が届きやすいところに置いておくことをお勧めしたい。さらに冒険家たちは「沖縄歴史倶楽部」YouTubeチャンネルまで開設している抜かりない現代っ子なのだ。

 (平良次子・南風原文化センター)


 まえだ・ゆうき 1990年福岡県生まれ、琉球大付属図書館勤務。専門は琉球沖縄史。

 こはぐら・けい 1990年沖縄県生まれ。名桜大等の非常勤講師。専門は歴史社会学(沖縄近現代史)。

 あきやま・みちひろ 1983年沖縄県生まれ。沖縄国際大准教授。専門は社会学、沖縄戦後史、平和研究。