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女性社長は「従業員の成長モデル」 金秀グループ、意識改革を会社の力に<企業の「女性力」>6


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「女性の働きやすい環境は男性にとっても働きやすい。良い環境をつくることで企業の成長につながっていく」と話す金秀グループ女性力推進委員会の松本眞一会長((左))と、金秀建設の上地千登勢社長((右))=2021年12月17日、那覇市旭町の金秀ビル

 2021年7月、建設業や小売り業などを手掛ける金秀グループ内に新たに2人の女性社長が誕生した。金秀建設の上地千登勢氏と金秀興産の砂川久美子氏だ。グループは女性の活躍を推進しており、女性力推進委員会の松本眞一会長は「女性従業員のロールモデルになっている。『自分たちも上を目指せる』という意識が高まっている」と話す。

同じ思いさせない

 県内の大手総合建設業でも異例の女性社長に起用された上地氏は、2000年に金秀建設に入社した。入社前に1級土木施工管理技士の資格を取得し、現場や工事の入札に行きたいと希望したが、当時の上司からは「女性を行かせたら笑われる」と断られた。

 あきらめきれず、積算課へ移り必死で知識を学んだ。「人見知り」な性格から無理だと思っていた営業職も、各社のトップと話し合う貴重な経験になり、自身の成長の糧にした。

 執行役員、常務、社長とキャリアアップしてきた上地氏だが、心残りもある。「もう一度やり直せるなら、子どもが生まれた時に戻って子育てをしたい」。仕事にがむしゃらに取り組んできたが、子どもの幼少時にもっと一緒にいたかったという悔いが残る。

 「今は制度が整備されている。家庭か仕事のどちらかを犠牲にするのではなく、どちらも頑張ってほしい」。従業員として、女性として、同じ思いを後輩にさせないために、働き方や風土の改善に取り組んでいる。

女性管理職3割に

 金秀グループは創業65周年を迎えた12年、呉屋守将会長の方針で女性管理職の比率を増やす計画に着手した。27年をめどにグループ内役員の女性比率を、現在の12・5%から30%に高めることを目標にしている。幹部職や役員に女性が増えることで意思決定層を多様化し、女性の視点による商品開発など競争力の強化や、従業員のモチベーション向上も期待する。

 グループ内を横断する女性力推進委員会は、女性社員のキャリア形成や働き方改革に加え、性別による役割分担意識の改革にも取り組む。21年12月には、グループ各社の男性管理職を集め、意識改革研修を実施した。女性や若手社員の状況を理解することで、誰もが働きやすい環境をつくることが狙いだ。

 松本氏は「時代は変化している。女性が働きやすい環境は、男性にとっても働きやすい環境で、それが会社の力につながる。トップが多様な人材が活躍する重要性を理解し、明確な意思を打ち出すことが最も大事だ」と強調した。
 (沖田有吾)


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