〈91〉腎臓がんについて 小さい腫瘍なら切除可能


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 現在、コロナ感染症のためさまざまな制限があり、一刻も早く通常の日常生活を取り戻すことを願いながら書いています。

 まず腎臓について簡単に説明すると、腎臓は背中の左右に2つあり、血液からの老廃物や水分を濾過(ろか)して尿をつくったり、血圧をコントロールするホルモンや赤血球を作るホルモンを分泌したりします。大きさは握り拳大で、そらまめみたいな形をしています。

 腎臓にできる腫瘍で悪性のものを腎臓癌(がん)と呼びます。一昔前までは手術で癌が取り除けない場合は放射線療法をしていましたが、抗癌剤がきかないため治療が困難なことがほとんどでした。しかし、近年、新しい治療薬が次々と承認され、医学の進歩を強く感じています。

 代表的な治療薬は(1)分子標的薬剤(癌細胞の特定の分子だけを狙い撃ちにする薬で、癌細胞の異常な分裂や増殖を抑えることを目的とした治療薬)、(2)免疫チェックポイント阻害薬(癌細胞に直接作用するのではなく、癌細胞を攻撃するTリンパ球に働きかける薬剤)と呼ばれ、従来の抗癌剤とは違った作用で癌を縮小させます。次々と使用できる薬剤が増えるため専門医でも勉強を怠るとすぐに治療薬の話題について行けなくなり、効果的な治療の選択ができなくなります。

 腎癌についてもう少し説明させてもらいます。50~70代に多く発症し、若年者にみられることもあります。喫煙と肥満が関係するといわれ、年々増加していることが分かっています。

 最近は人間ドックや精密検査などで、偶然に発見されるものがほとんどです。そのため初期の癌がほとんどとなっています。小さい腫瘍であれば腫瘍だけを取り除く腎部分切除が可能ですが、腫瘍が大きくなれば腎臓1個を摘出しなければなりません。

 現在コロナ感染症の影響で精密検査や人間ドックが延期、または中止になる場合が多いと思われ、早期の腫瘍の発見が遅れる可能性もあると思われます。コロナ感染症が収まり検査が通常通り可能となることを切に願います。

(玉城光由、那覇市立病院 泌尿器科)