【記者解説】名護市長選、市民が重視したこととは? 辺野古移設への関心は低下


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名護市長選挙の開票作業を進める職員ら=23日、名護市の21世紀体育館(高辻浩之撮影)

 名護市長選は渡具知武豊氏が1期4年の現職の強みを生かし、移設阻止を訴える岸本洋平氏との一騎打ちを制した。新型コロナウイルスの感染拡大で地域経済が冷え込む中、保育費の無償化など市民生活に直結する政策の安定的継続を市民がより重視したとみられる。

 一方、1998年以降の市長選で「最大の争点」であり続けた米軍普天間飛行場の辺野古移設への市民の関心は低下しつつある。だが、代替施設が完成すれば、市民は騒音や事件事故のリスクに将来にわたって向き合うことを強いられる。

 辺野古移設を争点化しない戦略で選挙戦に臨んだ渡具知氏だが、市民の生命と財産を守る市長として、責務の所在を明確にする姿勢が2期目は問われることになる。

 渡具知氏は、中心市街地の再活性化や子育て支援の継続などを訴え、子ども医療費無償化などの実績も市民に浸透を見せた。政権との良好な関係を後ろ盾に、市民生活向上の原資を獲得する政治手腕に一定の評価を得たことになる。

 基地問題では、市議時代に辺野古新基地容認だった渡具知氏だが、4年前の市長選と同様に、国と県との係争の「推移を見守る」として、争点をあいまいにした。

 岸本氏は「移設反対」が明確だったものの、埋め立て工事を阻止する具体的な手だては示せず、議論はかみ合わなかった。
 (長嶺晃太朗)