菅前首相も動いた…渡具知陣営「大こけ」からの総力戦<明暗…名護・南城市長選>


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「Vロード大作戦」と銘打ち、国道58号沿いに並んで支持を訴える渡具知武豊氏の支援者たち=20日夕、名護市(大城直也撮影)

 名護市長選の選挙戦終盤「三日攻防」に突入した20日、2期目を目指す現職の渡具知武豊氏(60)の選対幹部の電話が鳴った。「頑張っていますね」。声の主は、渡具知氏を推薦する自民党の茂木敏充幹事長だった。

 市長選告示後、茂木氏は党本部の執務室にこもって電話作戦に注力。沖縄に関係する経済界、地方議員らに幅広く支援や協力を呼び掛けていた。

 この日、渡具知陣営は夕方から「Vロード大作戦」と銘打った街宣活動を展開。国道58号沿いの名護漁港付近からタピックスタジアム名護までの2キロ以上の区間に支援者が並び、のぼりやプラカードなどを持って支持を呼び掛けた。

 500人程度を想定していた参加者は倍以上に膨らみ、国道両側に人の列が続いた。渡具知陣営の勢いを象徴する、市長選では初めての光景だった。

 当初から陣営の運動が盤石だったわけではなかった。昨年12月ごろから本格化した前哨戦では、耳に残るフレーズでアピールする相手陣営の車が市内を盛んに回っていた。対照的に渡具知陣営の動きは緩やかで、子ども医療費無償化などの実績への過信もあって楽観ムードがあった。

 だが、12月下旬に開かれた元市長で保守系重鎮の比嘉鉄也氏が出席した東江地区での集会や、自民党の小渕優子組織運動本部長らが登壇した女性集会で空席が目立ち、「大こけ」(陣営関係者)したことで危機感が生まれる。

 あてにしていた党本部からの応援が限定的になってしまったことも、さらに火を付けた。

 新型コロナウイルスの感染拡大で、両陣営とも中央政党幹部らの応援入りができない選挙戦となった。4年前の前回市長選で自民は、延べ50人以上の国会議員を現地に投入していた。今回は知名度や発信力を誇る河野太郎広報本部長や茂木幹事長も名護入りを見送らざるを得なかった。

 一方で、沖縄に強い関心を持つ菅義偉前首相が渡具知氏支援のため秘書を派遣し、自身も県内経済界の関係者に電話で支援を依頼するなど、てこ入れの手を緩めなかった。菅氏ら東京サイドの動きにつられるように、地元の動きも活発化していった。

 結果的には岸本洋平氏(49)に5085票差と、前回よりも票差を広げた。一地域の首長選に全国の関心が集まり、市内を二分する激戦が続いてきた名護市長選。「オール沖縄」も総力戦で臨んだ中での大差に、ある自民党国会議員は「次の市長選からは『普通の選挙』になるかもしれないね」とつぶやいた。
 (’22名護市長選取材班)


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