海兵隊は対中戦争における日米共同作戦を想定し、米軍基地での陸上自衛隊と第三海兵遠征軍の共同訓練の強化を重視している。1年前、民主党政権期に陸自と米海兵隊がキャンプ・シュワブに陸自水陸機動団を常駐させることで合意していたと報じられた。岸信夫防衛相は「今、全くそんなことは考えていない」と説明したが、新基地建設が進めば再度検討されよう。
陸自の弾薬庫は県内で那覇と与那国島、宮古島にあるが足りていない。海兵隊の弾薬庫があり、水陸機動団に不可欠な上陸訓練などもできるキャンプ・シュワブへの常駐は、陸自の南西防衛には不可欠だと考えられている。
久辺3区は陸自のキャンプ・シュワブ使用に反対していたが、受け入れに転じたという。地元の関心は米軍再編交付金による生活補償の実現にある。今回の名護市長選で岸本洋平陣営は、期限付きの出来高払いである米軍再編交付金を教育・福祉財源とする市政には問題があると訴えたが、実際には、基地所在自治体に迷惑料として毎年支払われる特定防衛施設周辺整備調整交付金(特防交付金)もある。
これも一部は医療費助成などの住民サービスに幅広く使える。施設の運用頻度や面積、自治体の人口などに応じて交付額が決まるが、運用の変化に応じた「特別交付」や大臣裁量枠があるなど算定根拠は不透明だ。
2010年に新基地建設に反対する稲嶺進市政が誕生すると、名護市は特防交付金を12年度に約2900万円、13年度にはさらに約2800万円減額されたが、容認派の現市政に代わった直後の18年度は約2600万円増える。
軟弱地盤がある大浦湾側の工事が難航するほど米軍再編交付金の交付も長引き、もし新基地が完成し同交付金が打ち切られても、自衛隊のキャンプ・シュワブ常駐を受け入れれば特防交付金の増額が見込まれる。交付金への依存は、このように際限なく基地の負担と引き替えに交付金を獲得し続ける未来しか見えない。
(国際政治史)