弱みに見える強み 車いすトラベラー・三代達也<未来へいっぽにほ>


この記事を書いた人 Avatar photo 上里 あやめ
未来へいっぽにほ/三代達也

 「車いすに乗っている人」は、一般的にどんなイメージだろうか。足腰の不自由なご高齢の方、障がいを持っている方。場合によっては、社会的弱者とも呼ばれる。

 確かに歩ける人と比べて行動範囲は狭いし、できない事は多い。しかし視点を変えてみるとどうだろう。僕は車いすユーザーになってから、たくさんの気付きがあった。エレベーターの鏡一つにしてもそう。基本、車いすユーザーの場合、エレベーターの中で旋回できるスペースがないと壁を眺めるだけで、あの鏡がなければ僕は今何階にいるのかも分からない。エレベーターを出る時、その降りる先に何人の人が立っているのかも見ることができない。あのたった一枚の鏡の大切さが身に染みた。なるほど、歩ける時には気付けなかった、ちょっとした配慮が誰かにとって大きな助けになるんだ。

 先日、糸満市にある大型施設のオープン前バリアフリー視察に入らせていただいた。既に十分整備されていたが、より多くの方たちが心地良く使いやすいように、僕だけの目線ではなく僕と今まで出会ってきたたくさんの困り事を持つ人たちの視点も取り入れて意見を出した。例えば、バリアフリートイレによく子ども用のおむつ交換台はあるが、おむつ替えが必要な「大人」はどこでするのか。結論、大きなベッドも必要となる。こんな視点は、僕が車いすの生活にならなければ到底持ち得なかった。

 16年前、僕が障がいを負い、何もかもを諦め、弱みと思っていたものが社会のためになるとは思わなかった。この弱さが、いつのまにか僕の強みとなっていた。

 読んでくださっている皆さんには、弱みはありますか。自分ではそう思っていることが、実は誰かの価値になっているのかもしれません。