沖縄各地のフクギ、15年間で5000本を調査した2人 「福木巨木の巡礼誌」発刊


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15年にわたる琉球列島の集落・拝所調査を経て、「福木巨木の巡礼誌」を発刊した仲間勇栄さん(左)と来間玄次さん=2021年12月、琉球新報社

 琉球列島の集落に点在するフクギ(福木)の巨木の由来と歴史、樹齢をまとめた「福木巨木の巡礼誌」が昨年12月に発刊された。調査・執筆したのは琉大名誉教授の仲間勇栄さんと技術士の来間玄次さん。奄美大島から八重山諸島にかけて約5千本を調査。樹齢の古い巨木174本の分布を分析したところ、琉球王国時代、森林政策に尽力した三司官の蔡温が集落形成と生産力向上を目的に防災林の植栽を推進した1737年を起点に、琉球処分(併合)のあった1800年代後半にかけて集中。王国時代の集落の造成にフクギが活用されたことが裏づけられた。

 仲間さんは、蔡温が三司官在職中の1737年以降、琉球国全体で土地制度改革と、それに伴う村落の移動、新設・整備が行われ「季節風などから村落を守るため、フクギの植木が利用されてきた」と分析した。また、「中国で風水地理を学んだ蔡温が沖縄の気候に合った集落づくりを主導した。農業生産力を上げるため防災林の役割を持たせたフクギの植林をすすめたのではないか」と推察した。

 仲間さんと来間さんは農学博士。15年かけて各地の集落や拝所を訪ねフクギを計測してきた。仲間さんらはフクギの切り株にある円盤の年輪の係数を応用して、幹の太さから樹齢を推定した。沖縄では他府県のような幹周13メートル以上の老木はほぼみられないが、フクギの巨木は群を抜いているという。

 本書には奄美から八重山諸島まで、フクギ巨木のある集落の地図や由来、写真などを収集し、資料的な価値も高い。竹富町波照間の上里家と、北中城村の中村家についてはフクギ屋敷林の詳細な配置図と、屋敷に配された木の直径や樹齢などを調査データとして収録している。台湾やフィリピンでフクギが利活用されている事例も盛り込んだ。

 来間さんは「(集落のフクギ林は)台風が吹き寄せる東側ほど林帯が厚い。この本はフクギの変遷が分かる学術的内容になっていると思う。50年、100年先の研究者が同様の調査をする際の基礎データとして活用してほしい」と期待を寄せた。本書は編集工房東洋企画が発刊。300ページ。税込みで3960円。県内主要書店で販売している。 (高江洲洋子)