〈93〉骨髄バンク登録 誰かの命が救えるかも


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 急性リンパ性白血病を発病した競泳の池江璃花子選手が、造血幹細胞移植によって2年足らずで見事に復帰を果たされました。ご本人の並々ならぬ努力はもちろん、医療の目覚ましい進歩は私たちに感動と希望を与えてくれました。

 池江選手の受けた造血幹細胞移植を解説します。白血病や悪性リンパ腫、再生不良性貧血など、血液の病気や先天性代謝異常の一部では、治癒を目指すために血液細胞のもとになる「造血幹細胞」を移植する治療が必要となる場合が少なくありません。

 造血幹細胞を移植する方法には「骨髄移植」「末梢(まっしょう)血幹細胞移植」「臍帯血(さいたいけつ)移植」があります。造血幹細胞は誰からでももらえるものではなく、白血球のタイプを示すHLAが一致しているひとから提供を受けることが一般的です。HLAの組み合わせは数万通りあり、兄弟間では4分の1の確率で一致しますが、兄弟間で移植できない場合は骨髄バンクに登録されている非血縁者の中からドナー(提供者)を探したり、臍帯血移植を選択したりする必要があります。臍帯血は赤ちゃんのへその緒の血液であるため、含まれる造血幹細胞の数が少なく、移植が難しい場合もあります。非血縁者の間では数百から数万分の1の確率でしかHLAが一致しないため、骨髄バンクではなるべく多くのドナーを募っています。

 沖縄県は人口当りの骨髄バンクドナー登録者数が全国1位です。人口千人当たりにおける登録者全国平均は9.5人のところ、沖縄県は36.6人とダントツトップです。幹細胞を提供されたドナーに対して助成制度を設けている県内自治体もあります。骨髄バンクへのドナー登録は18歳以上54歳以下で健康状態が良好な方であれば、わずか2ミリリットルの採血で行うことができます。献血ルームや保健所で登録受け付けを行っておりますので、関心のある方はぜひご連絡ください。骨髄バンクを介する移植が必要な患者さんは毎年2千人以上。あなたの善意と勇気の1歩が、病気と闘う誰かの大きな希望になります。

(西由希子、琉球大大学院医学研究科 内科)