「繁忙期乗り越えられるか」農家の人手不足、収穫できず廃棄も…頼みの技能実習生が入国制限


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「3月のお彼岸は年間出荷量の3~4割を占める。収穫作業ができなければ大きな損失になる」と話す新垣大策さん=4日、糸満市名城

 長期化する新型コロナウイルス感染症の影響で外国人技能実習生が入国できないことで、県内でも人手不足に陥る農家が増えている。特にキク類は県外へ大量に出荷する彼岸を控え、農家にとって2~3月は年間を通して最も忙しい時期となる。「繁忙期を乗り越えられるのか」「収穫の手が回らず、廃棄する農作物が続出する」。県民の食や生活を支える農家からは、不安と嘆きの声が漏れ聞こえる。

 父親とともに年間500万本の小菊を出荷する糸満市名城の新垣大策(しんがき・だいさく)さん(34)は、ベトナム出身の技能実習生4人と特定技能実習生2人を採用している。当初の計画では、特定技能実習生の2人は2021年9月までの採用で、彼らが帰国するタイミングで新たにインドネシア人2人を受け入れる予定だった。だが、コロナ禍で各国が出入国制限を設けたため新たな実習生は来日できず、また2人も帰国できないため急きょ1年間の雇用延長契約を結んだ。

 新垣さんは「うちは2人が残ってくれたから何とか助かったが、周りには今期の出荷を心配する農家がたくさんいる」とおもんぱかる。県内では日本人向けの採用募集をかけてもなかなか人が集まらず、人手不足を補うために外国人の技能実習生に頼ってきた農家も少なくないという。「うちも今後どうなるか分からない。実習生がいる時に苗をたくさん植えても、収穫時に人がいなければ廃棄せざるを得ない。経営計画も立てづらく不安は大きい」と吐露した。

 野菜農家の百次成仁(ももじ・なりひと)さん(43)=糸満市潮平=も20年12月以降、新たな技能実習生を受け入れられず、昨年は一部のレタスを廃棄した。18年に、最初の実習生を受け入れるタイミングでビニールハウスの面積を拡張するなど事業強化に乗り出したが、その後コロナの世界的流行に見舞われた。

 昨年は収穫作業に十分手が回らず、売り上げは19年と比較して2割落ち込んだ。「今まさに収穫期を迎え繁忙期だが、人手が足りない。この状況が続くと死活問題になる。2週間の隔離期間があってもいい。1日も早く実習生に来てもらいたい」と吐露した。

 (当銘千絵、写真も)