空き家は6軒に1軒…レジャーや産業乏しく 超高齢化の島・渡名喜(上)<人口減社会を生きる>1続


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「迫る介護の危機 独居高齢者が増加、支え手は減少 超高齢化の島・渡名喜(上)」から続く


 

伝統的な赤瓦家屋が密集し、重要伝統的建造物群保存地区に指定される渡名喜村の集落に点在する空き家=2021年12月

 渡名喜村は2000年に、昔ながらの沖縄の風景を残しているとして、集落が国の「重要伝統的建造物群保存地区」に指定された。歴史を受け継ぐ特徴的な集落に、ある問題が目立つようになった。空き家問題だ。

 村の調査では集落を形成する約290戸のうち50戸以上が空き家だ。6軒に1軒以上は人が住んでいないという割合だ。病気や介護で高齢者は島を去るが、家にはトートーメー(位牌)が残されているため、売却したり、人に貸したりすることをためらう家族が多いという。

 定住人口を増やせない要因に、産業の乏しさがある。近隣の慶良間諸島では観光産業が盛んだが、渡名喜村にはマリンアクティビティー事業者が1社もない。フェリーでの日帰り旅行が難しいなどの制約から、観光産業の受け入れ体制はほとんど整備されていない。

 安定的な収入が得られる職は数少ない中、住民は自ら取ってきた野菜や魚を分け与えるなどして、助け合いながら生活している。生活コストが低い利点はあるが、教育費などで現金収入が必要になる子育て世代にとっては事情が異なる。

 介護職員の比嘉幸枝さんは「島の家庭は子どもが成長するにつれ、本島の世帯よりも何倍もお金が掛かる。ある時期になると親は学習環境に不安を持って、渡名喜で子育てをしようとは思わなくなる」と語った。

 内閣府の高齢者白書によると、2019年の65歳以上高齢率は全国平均の28・8%に対し、沖縄県は最下位の22・2%だ。沖縄は全国でも数少ない人口増加県ではあるが、地域ごとに細かく見ると事情は異なる。

 特に小規模離島では刻々と人口減少と少子高齢化が進む。高校進学のためには島を離れなければならないことや、生活コストの高い「島」という制約から生じるさまざまな課題が横たわる。

 とりわけ人口が県内最小で、65歳以上の高齢者率が41・3%に達する渡名喜村は、地域社会の存続危機に最も直面している島といえる。比嘉朗村長は「人口がこのまま減って、島の生活が維持できなくなる危機感は相当ある」と吐露した。

(梅田正覚)

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