【深掘り】「東海岸発展の起爆剤」曲がり角 MICE施設縮小、コロナ経て需要変化


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大型MICE施設の建設予定地=7日、与那原町東浜

 西原町と与那原町にまたがる中城湾港マリンタウン地区に建設する、企業の報奨旅行や国際会議などを開く大型MICE施設について、県はメーン展示場の規模を従来計画の3分の1となる1万平方メートルに縮小する方針に変更した。沖縄経済や本島東海岸地域発展の起爆剤として期待を背負ってきた計画が、新たな局面を迎える。

 大型MICE施設は当初、2020年度に利用開始予定だった。県は沖縄振興特別推進交付金(一括交付金)を財源とした整備を予定していたが、事業の採算性などを理由に国が交付を認めず、活用を断念した。

 県は単独整備となると財源負担が重いため、20年6月に官民連携で公共サービスを提供する手法で事業化する方針を発表。施設整備や管理運営を民間企業が担い、建物を県が所有する。

 民間企業が施設を整備した後に、県が買い戻す予定だが、担当者は「補助金がないとなると結構な額になる」と話し、財源の調整を詰めている。

 経済界「拡大を」

 県は計画当初、展示場については2万平方メートルを想定。しかし経済界からは規模拡大を求める声が挙がり、16年に3万平方メートルに規模を拡大していた。

 方針変更でマリンタウン地区に予定する施設の収容人数は1~2万人となる見通し。県内主要施設の最大収容数は沖縄コンベンションセンターが約4千人、沖縄市多目的アリーナが約1万人だ。

 沖縄経済同友会の渕辺美紀代表幹事は、県の最終案を見ないと正確には言えないとした上で「(既存施設に)プラスアルファする程度では、限定的な効果で終わるのではないか」と規模縮小を懸念する。

 「お荷物」回避

 一方、新型コロナウイルス感染症の流行に伴いMICE需要は停滞する。20年の県内MICE開催件数は前年比70%減の490件と大幅に落ち込んだ。オンラインイベントが主流となり、県関係者はこの傾向が続くとの見方だ。

 沖縄観光コンベンションビューローの下地芳郎会長は「一定規模の施設は必要だが、質を求める議論にシフトすべきだ」と指摘。「通信インフラの充実など、使い勝手の良い施設になる必要がある」と持論を語る。計画に携わった県幹部は「大幅変更となるが結果的には良かった。当初の計画通りに造っていたら、コロナ禍でお荷物施設になっていたのでは」と話した。
 (中村優希まとめ、写真も)


<用語>MICE(マイス)

 ビジネスイベントの総称で、企業などの会議(ミーティング)、報奨・研修旅行(インセンティブトラベル)、国際機関、学会などが行う国際会議(コンベンション)、展示会・見本市、イベント(エキシビション/イベント)の頭文字を取る。開催を通じ利用者の長期滞在が見込め、大きな経済効果を生むといわれている。