【識者談話】那覇軍港訓練は台湾有事を想定 重要度増、先行返還困難の可能性も(野添文彬・沖国大准教授)


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野添 文彬(沖国大准教授)

 台湾有事での米海兵隊の役割として、巻き込まれそうな民間人などを救出する「非戦闘員避難作戦(NEO)」がある。今回、那覇軍港で実施されている訓練は、非戦闘員避難を含んでおり、台湾有事が念頭にあると推測できる。

 米海兵隊はベトナム戦争末期のサイゴン陥落時にもヘリなどで民間人を脱出させた。台湾有事でも米国人の救出は課題となる。有事が起こった際に、米軍が台湾でNEOを実施するという意思を示すことは、中国に対して、紛争を抑止するメッセージになるという議論もある。NEOで台湾に派遣した米海兵隊が中国の攻撃を受ければ、それを名目に反撃もできる。

 市街地に近い那覇軍港での訓練は、より実戦に近いといえる。那覇軍港はベトナム戦争や湾岸戦争では補給拠点として機能したが、近年は遊休化の指摘がある。今回の訓練は同軍港を「これからも使う」という意思表示もあるだろう。那覇軍港は、台湾有事に伴う米軍作戦でも補給拠点としての重要度は増すとみられる。県が求める浦添ふ頭地区への移設に伴う先行返還も難しくなる可能性がある。

 今回、米軍は報道機関など向けに訓練実施を事前通告した。「訓練をやる」という強い意思表示にもみえる。米軍は市街地に近接した場所での訓練が、県民に不安を与えることを意識すべきだ。
 (談、国際政治学)