〈95〉骨粗しょう症と骨折 運動と環境整備が重要


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 もし転んだとしても骨折なんてまだ自分とは関係ない! もしくは、たまに聞く骨粗しょう症と骨折の関係とは何だろう? そう思っている方にぜひ読んでいただきたいです。女性の方にまず知っていただきたいことは、75歳以上では骨密度が平均値であっても骨粗しょう症と診断されることです。これは閉経後、女性ホルモンの減少で骨密度がどんどん落ちていくためです。男性であっても喫煙、アルコールの過剰摂取、親の脆弱性骨折の既往などがあれば注意が必要です。

 骨粗しょう症となり最も困るのが、転倒など軽微な力で生じる骨折(脆弱性骨折)を起こしてしまう危険性が高くなることです。

 脆弱性骨折の一つに大腿(だいたい)骨近位部骨折があります。太ももの付け根部分の骨折で、手術が必要となることがほとんどです。手術をせずに歩けるようになる可能性はとても低いです。しかも大腿骨近位部骨折となった方の1年以内の死亡率は10%前後、5年生存率は50%前後との報告もあり、とても恐ろしい骨折です。

 したがって、脆弱性骨折を予防することが大切なことです。大腿骨近位部骨折の原因の7~8割が転倒です。それを防ぐには(1)運動(2)自宅環境を整えることが重要です。

 (1)普段から筋トレや体操を行い下肢の筋力を鍛えましょう。テーブルなどを支えにした片足立ちや、両足で踵を上げる運動、スクワットなどが効果的です。また、地域主催の運動イベントに参加してみましょう。

 (2)自宅内の状況を見直してみましょう。夜間にトイレに行くときなど、普段の生活で転倒することが意外と多いのです。風呂場に滑り止めのマットを敷く、床に置いてある物を片付けるなど、工夫次第で転倒を予防することができます。

 もし、大腿骨近位部骨折を起こしてしまった場合でも、悲しむ必要はありません。できるだけ早く手術を行い、リハビリを続けることで、ケガする前と同じように日常生活を送ることが可能となります。ただし、再骨折予防に骨粗しょう症の治療を必ず行いましょう。

(武藤亮、浦添総合病院 整形外科)