「積もった赤字、1円でも返す」まん延防止解除に期待 一方で深刻な人手不足


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
新型コロナウイルスのまん延防止等重点措置により、20日まで休業のお知らせを張り出している飲食店=16日、那覇市内

 玉城デニー知事は16日、まん延防止等重点措置について、政府に延長を要請せず予定通り20日で終了する方針を発表した。経済界からは、卒業旅行シーズンなどを前に需要回復を期待する声が上がった。一方で、長期のコロナ禍で従業員が退職し、人手不足に陥るなど深刻な打撃を受けている事業者も多い。

 修学旅行やビジネス客を中心に受け入れる南西観光ホテル(那覇市)は、4月以降の修学旅行の予約が新型コロナウイルス感染拡大前並みの水準で入っている。ただ一部の学校は遠方への旅行を控え、他府県に方面変更をしたという。

 2020年度に引き続き、21年度の修学旅行もコロナ前の8~9割減の状況が続く。措置期間中の1、2月も予約が入っていたが、ほぼキャンセルとなった。上原尚彦副支配人は「お客さんを受け入れる体制は整っている。このまま回復することを期待している」と話した。

 御菓子御殿は、昨年末の観光需要の回復で菓子商品の生産量を増やしたが、年が明けすぐに重点措置が発令されたことで需要が落ち込み、在庫が発生。地域の子ども食堂や病院などに配布した。今後は需要の回復状況を見て生産量を調整していく予定だ。澤岻英樹社長は「これから卒業旅行シーズンもあり、4月からは沖縄関連の連続テレビ小説も始まるので回復を期待している」と語る。

 飲食店の時短営業や休業が相次いだことで、関連する業界にも深刻な影響が生じている。那覇市で運転代行業を営む男性は「やっと(解除)だという期待感があるが、すぐに客足が戻ることはないだろう」と複雑な心境を吐露する。20年以降、何度も繰り返された制限により、自身も出先で飲酒する機会がほとんど無くなった。

 コロナ前は5人いたアルバイトも、仕事がないため次々と辞めていき、今は2人で仕事を回す。男性は「積もり積もった赤字分を1円でも返したい思い。今度こそリバウンドせず、少しずつ経済が回り出すことを願っている」と述べた。

 重点措置の解除を冷静に受け止める経営者もいる。沖縄市と那覇市の国際通り周辺で3つのレストランを営む60代の男性は「県外ではオミクロン感染が広がっている。沖縄がいち早く解除しても、観光客の来県が見込めない。営業再開しても(地元客で)売り上げへの大きな寄与を期待できない」と話した。

 レストランは現在2店舗が休業、1店舗は弁当のみの販売。男性は「休業の間、従業員が辞めていった。営業再開したいが、すぐには人手の確保ができない」と懸念した。
 (中村優希まとめ)