リウマチやアトピー用、抗がん剤も 安定供給まで「1年以上」 沖縄、薬不足の現場


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
調剤薬局の棚では在庫が不足し、多くの薬に「出荷調整品」の印が付けられていた=14日、本島内

 全国的に広がったジェネリック医薬品(後発薬)の不足を受けて大手メーカーが増産体制の構築を急ぐなど対策が続けられているが、安定供給までは「1年以上かかる」(県内医薬品卸関係者)との観測も出ている。「薬不足」の現状を追った。

【ニュースの言葉】ジェネリック医薬品(後発薬)とは?

>>【関連記事】使用割合は全国一、沖縄でジェネリック医薬品不足が深刻 薬局「綱渡り状態」

 2月中旬、本島内のある薬局は、処方箋を持った客でごった返していた。調剤する部屋は棚一面に種類ごとに薬が分けられているが、多くに在庫不足を示す「出荷調整品」と書かれた印が付けられていた。

 この薬局に勤務する薬剤師は「多くの品目で出荷調整がかかり、中には先発薬で不足するものも出ている。次の日に同じ薬が入ってくるのか分からないまま、綱渡りだ」と頭を抱える。治療方法や服薬を変えることによる副作用など、患者への影響に懸念も示した。

 政府は後発薬の使用を積極的に推進し、薬価を抑える政策をとってきた。価格の高い薬が売れず、製造会社が造らなくなった先発薬もあり、薬不足に拍車が掛かっているとの見方も上がる。

 県内の医薬品卸売業の担当者は「リウマチや抗アレルギー用の薬などで安定的な供給が厳しくなっている」と話す。先発薬への切り替えも生じているが、全国的な不足のため、供給が不安定となっている先発薬もあるという。

 別の医薬品卸売業は「収束までに1年以上かかる見込みと聞いた。患者さんが負担の増加や飲み方の変化を嫌がって、薬を飲まなくなると症状が悪化してしまわないか心配だ」と話した。

 薬不足の異常事態に医師らも危機感を示す。那覇市内の開業医によると昨年、ビタミンDを活性化させる薬を処方しようとした際、薬局に足りないと言われたことがあった。この医師は「別の薬に変えざるを得ないことも多くでてくるだろう。治療は薬剤師と連携して成り立っているので、入手が困難になる状況を協力して乗り越えていきたい」と語った。

 乳がん治療に携わる那覇西クリニックの玉城研太朗医師によると、抗がん剤などでも一部供給不足が生じている。薬の確保が難しいことを理由に、島しょ地域の患者を地域の医療機関が受け入れるめどが立たず、同病院で受け入れた事例などがあったという。「命に関わる薬の供給が減るのは問題だ。十分な供給体制を早めに確立してほしい」と求めた。  (池田哲平、知念征尚、沖田有吾)