【うるま】大きな牛の足元を縫うように進んだと思えば、飼料入れで寝転ぶ姿もご愛嬌(あいきょう)だ。うるま市石川東恩納の平川康宏さんの牛小屋では、2匹の猫、クロとトラがくつろいでいる。ひと昔前は牛の爪や角をかじるネズミ退治のために牛小屋で猫が飼われていたが、衛生環境が整った今ではお役御免に。かつての小屋の守り神たちは、牛との穏やかな共同生活を営む。
「元々相性がいいんでしょうね」と平川さん。自由に駆け回る猫に対して、牛は嫌がるそぶりを見せないという。子牛にミルクを与える時は、クロとトラがおこぼれにあずかろうと寄ってきて、子牛と猫のキスシーンが毎日見られるそうだ。
平川さんによると、ネズミの姿を目にしなくなった現在でも、多くの牛小屋には猫の姿があるという。「飼っているというよりは、ある日やってきて居座り続けているのを見守っている状態だね」と笑う。猫にとって、牛小屋は居心地が良い空間なのだろう。
小屋にやってきて2年となるクロとトラは時にはお礼のつもりか、バッタやトービーラー(ゴキブリ)、アブラムシなどをお土産にくれるそう。「害虫をやっつけてくれるのでありがたい」。平川さんがそう話すと、2匹は照れ隠しなのか、さっと外に走り去った。
(新垣若菜、写真も)