〈96〉肺がん診療の流れ 初期段階での発見肝心


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 肺がんは肺にできる悪性腫瘍で、男性のがんの中では死因の第1位、女性のがんの中では第2位の病気です。以前はタバコを吸う男性に多い病気でしたが、現在はタバコを吸わない女性の肺がん患者さんが増えています。

 肺がんは画像検査である胸のレントゲン写真や肺を輪切りに撮影できるCTで見つかります。検査を受けるきっかけは検診や人間ドック、あるいは咳や血痰(けったん)や痛みなどの自覚症状です。

 一般的に、自覚症状がきっかけで発見された場合に比べて、検診や人間ドックで発見された肺がんのほうが小さく、初期の段階のことが多いと言われています。また、CTではレントゲン写真ではわからないような小さな肺がんを発見することができます。

 画像検査で肺がんの疑いがある病変が見つかれば、肺がんであることを証明するために、気管支鏡にて一部をかじり取る生検が行われます。それで顕微鏡によってがん細胞を認めれば肺がんと診断されます。

 たとえ診断が得られなくても肺がんの可能性がある場合には、全身麻酔になりますが、病変を直接切り取って手術中に顕微鏡で見てもらい、肺がんであれば、そのままがんの手術を行うこともあります。

 最近では肺がんの大きさ、進行の度合いによりますが、胸腔鏡(カメラ)支援のもと、小さな創で行う手術が多くなり、ロボット支援により行う手術法もでてきました。

 要は、小さなうちに発見できれば小さな創で手術が行え、完全に治るのです。手術に耐える体力がない・手術は受けたくない場合には放射線治療もあります。

 残念ながら、進行している段階で見つかった場合にも、今までの抗がん剤だけでなく、がん細胞だけを狙い撃ちできる分子標的治療薬や、本来もっている自分の免疫力を利用してがん細胞を攻撃する免疫療法が飛躍的に成果を上げており、元気でいられる期間がのばせるようになっています。

 とにかく初期の段階で見つけることが肝心です。そのためには、積極的に“検診・健康診断”で胸のレントゲン写真を撮るようにして下さい。オプションでCT検査があればお勧めします。

 (照屋孝夫、琉球大学病院 胸部心臓血管外科)