【中城】中城村護佐丸歴史資料図書館は13日、村の久場崎で戦後引き揚げが始まってから昨年で75年になったのを記念し、村役場でオンラインも活用したシンポジウムを開催した。研究者や学芸員ら識者6人が登壇し、沖縄で引き揚げの中心地となった久場崎や、先島、本土での引き揚げについて解説した。
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琉球大学の中村春菜准教授は、オンライン公開されている米海軍工兵大隊博物館の資料を基に講演した。久場崎港の浚渫(しゅんせつ)工事は、海軍第8旅団所属の第21工兵大隊(愛称ブラックジャック)が従事したと報告した。
久場崎港は本島南部戦線への物資供給のために造った。14~15日間の突貫工事だったという。中村准教授は久場崎港の成り立ちが、本土の引き揚げ港と性格が異なると指摘。「(引き揚げ研究の)アプローチに海軍工兵大隊の資料が寄与できる部分は少なくない」と強調した。
糸満市出身で舞鶴引揚記念館(京都府舞鶴市)に勤める長嶺睦学芸員は、シベリアなどからの帰還地となった舞鶴港について講演した。沖縄出身者でシベリア抑留の犠牲になったのは112人で、舞鶴から沖縄へ向かったのは1080人だったという。
舞鶴で帰還者の滞在は通常3日から1週間であった一方、沖縄出身者は1カ月だったとして「(沖縄が日本の)施政権の外でなかなか帰れなかったことが考えられる」と紹介した。
上智大学名誉教授で大和大学の蘭(あららぎ)信三教授や同志社大学〈奄美・沖縄・琉球〉研究センターの森亜紀子研究員、フリーランスで元八重山毎日新聞の松田良孝記者、吉浜忍元沖縄国際大学教授も登壇した。
中城村護佐丸歴史資料図書館では3月まで久場崎の引き揚げ企画展が開催されている。収蔵資料がユネスコ世界記憶遺産に登録されている舞鶴引揚記念館の巡回展は、3月12~27日に同図書館で開かれる。
(金良孝矢)