会えないからこそどう伝えるか 三代達也(車いすトラベラー)<未来へいっぽにほ>


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三代達也(車いすトラベラー)

 新型コロナ禍で病院や施設での実習に行けない医療系学生たちに、どのようにして車いすユーザーの困り事を体感してもらえるか―。沖縄リハビリテーション福祉学院の教員と共に、PT(理学療法士)学科の3年生に向けて、約1カ月かけた壮大なオンライン授業を行った。

 テーマは二つ。まずは「三代さん、ウチで生活するってよ」。車いすユーザーと共同生活する環境をイメージさせた。家の間取り、段差、お風呂、トイレ、キッチンはどうすれば使いやすいか、家の改修にはどれくらいの経費がかかるか、またはそれらの改修に助成金などを受けられるのか。制度を調べさせた。

 次に「三代さんと観光するってよ」。旅の出発から終わりまで、空港~昼食~観光地~アクティビティ~夕食~を具体的に考えてもらった。沖縄の交通機関や観光地のバリアフリーの現状を把握し、車いすユーザーの移動について理解する。

 これら二つの課題で、学生に本気のプレゼンをしてもらった。この授業の狙いは、三代達也というモデルを使って、将来自分が受け持つ患者さんが退院後に待っているであろうさまざまな困り事を前もって予習してほしかったことにある。

 なぜなら僕が入院していた16年前、退院後の未来は不安でしかなかったからである。家をバリアフリー化するにはいくらかかるのか、外出はどこまでできるだろう。彼らが現場に立った時、僕のような当事者の不安に親身に寄り添えるセラピストになってほしい。

 コロナ禍で対面できず、体に触れて技術を伝えられない今だからこそ、学生の未来を思って心を磨く。学生たちとは今でも親交があり、一度の授業で終わらなかったのも感慨深い。間違いなく自分の人生最高の授業だった。