9月に1期目の任期満了を迎える玉城デニー知事は、県議会2月定例会の代表質問で県知事選への出馬表明を見送った。県政与党議員からの質問に答える形で再選出馬の意向を示すことが想定されていた。知事選に向けた「オール沖縄」の組織づくりは始まったばかりで、体制が整うのを待っての正式表明に切り替えた。超党派で取り組む日本復帰50年記念事業の成功に向け、選挙ムードが前面に出るのを避ける狙いもあるとみられる。
玉城知事の出馬表明を見込み、24日の瑞慶覧功氏(てぃーだ平和ネット)の代表質問には多くの報道陣が詰め掛けた。カメラのシャッター音が議場に鳴り響く中、玉城知事は「家族からの理解、後援会の協力なども得ながら熟考する」と述べるにとどめた。
知事側近は「『家族からの理解』『後援会の協力』と語った。本人の意志はすでに固まっているというメッセージだ」と解説し、「半歩前進だ」と評価する。
関係者によると、昨年末ごろから後援会などで、知事選への体制づくりの加速を政党など支援組織に促すためにも玉城知事に出馬表明を求める議論があった。そこで表明時期と設定されたのが2月定例会だった。
一方、政党・会派間の調整機能として前回知事選で司令塔的役割を果たした「調整会議」が18日に招集され、体制づくりに向けた動きも出てきた。玉城知事自らが出馬を表明する前に、支援団体や政党による出馬要請を受けた上で2期目の態度を示すことが望ましいとの意見も浮上してきたこともあり、玉城知事は体制整備後の出馬表明に切り替えたという。
知事後援会の会長も務めていた呉屋守将・金秀グループ会長など保守・経済界の離脱で「オール沖縄」体制には変化もある。ある与党幹部は「組織を再構築する前に出馬表明するのは前のめり感がある。知事の出馬は周知のことで、焦る必要はない」と指摘する。
出馬表明見送りは、野党・自民への配慮だとの声も広がった。22日の代表質問で呉屋宏氏(自民)が2期目出馬を質問した際に、玉城知事は「任期を全うするよう全力を尽くす」とだけ述べた。「自民議員には答えていないのに、与党議員だからと出馬表明したら自民からの反発が強い」(与党幹部)というのが理由だ。
自民の反発を避ける理由として、関係者は「復帰50周年記念事業が知事の念頭にあるのでは」とにらむ。事業に超党派で取り組むべきだとの認識が与野党で共有される中、表明による選挙ムードの高まりで自民との対立構図が際立つのを避けたいとの見方だ。
(大嶺雅俊)