那覇軍港での米軍の訓練、何が問題?米軍、国、沖縄県の考え方は?<そこ詳しく!>


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 民間の那覇港に隣接し、那覇空港や那覇市街地にも近い那覇軍港で行われた米軍の訓練が問題になっています。どういう訓練で、何が問題なのか記者に聞いたよ。

復帰時の日米合意が守られていないんだ

塚崎昇平記者(政経グループ)

 りゅうちゃん 那覇軍港ってどんな基地なの?

 塚崎昇平記者 那覇軍港は正式には「那覇港湾施設」と言い、米軍物資の輸送や積み下ろしに使う米陸軍が管理する港です。沖縄の米軍基地ではホワイト・ビーチ(うるま市)に次ぐ軍港です。

 りゅうちゃん その軍港でどんな訓練が行われたの?

 塚崎記者 在沖米海兵隊が2月8~13日に、「非戦闘員避難」などの名目で訓練を実施しました。海兵隊員を乗せた垂直離着陸輸送機MV22オスプレイやヘリコプターなどが港内に離着陸したほか、基地内の建物を大使館に見立て、武装した隊員が警護する様子も確認できました。これまで那覇軍港でこうした訓練が行われたことはありません。今後も続くようであれば、事故の危険性や騒音などの被害は大きくなります。玉城デニー知事は「県民に新たな基地負担を強いる」と抗議しています。

 りゅうちゃん 飛行場じゃないのにオスプレイが飛来していいのかな。

 塚崎記者 いえ、県や那覇市は那覇軍港での航空機飛来や訓練について「訓練の使用は(港湾の)主目的とは考えられない」として、那覇軍港で航空機の離着陸はしないように求めています。これに対して日本政府は、米軍が訓練目的としている非戦闘員避難の際には港を使う場合もありうるとして那覇軍港での訓練実施を問題視せず、オスプレイなどの飛来も「使用主目的に沿う」として許しています。

 りゅうちゃん 那覇軍港の使用目的を巡って国と県で立場が違うんだね。米軍基地の使用目的って誰が決めているの?

 塚崎記者 1972年5月15日で米国が沖縄の施政権を日本に返還するに当たり、日米両政府と在日米軍関係者でつくる日米合同委員会で、在沖米軍基地の使用条件が取り決められました。日本への復帰当時、沖縄には87の米軍基地や訓練区域がありました。取り決めは、沖縄の施政権を返還した後も米軍による使用を保障するためのものでした。各施設の使用主目的のほか、使える機材や武器、時間などの条件を詳細に規定しています。

 この時の合意文書(施設分科委員会覚書)は、沖縄返還の日付から「5・15メモ」と呼ばれています。その5・15メモで、那覇軍港の使用主目的は「港湾施設および貯油所」と定められているのです。

 りゅうちゃん その決まりだったら、やっぱりオスプレイの離着陸はできないはずじゃないの?

 塚崎記者 県はその立場に沿って、「5・15メモの使用主目的は厳格に運用すべき」と訴えています。ただ、那覇軍港のメモには禁止される武器や機材の規定はありません。米軍は「何一つ制限は書いていない」といって、オスプレイの飛来や武器を使用した訓練を正当化しています。

 

 りゅうちゃん 5・15メモも米軍の訓練の歯止めになっていない感じだね。これまでは問題にならなかったの?

 梅田記者  そもそも、沖縄の日本復帰時に決められた5・15メモは国民に公開されていませんでした。県は公開を求めていましたが、政府は日米合同委員会の合意は秘密事項として公開を拒み、一部の公開にとどまっていました。全て公開されたのは、合意から25年がたった1997年です。

 公開の背景には、95年に起きた米軍人による少女乱暴事件で沖縄の基地撤去を求める訴えが高まり、普天間飛行場の県内移設などを決めた96年のSACO(日米特別行動委員会)最終報告がありました。このSACO最終報告で日米合同委員会の合意について「一層公表することを追求する」と決めたこともあって、当時の橋本龍太郎首相が当時の大田昌秀知事の要請に応じる形で公開しました。

 りゅうちゃん 5・15メモが公開されても、いまだに米軍基地を巡って問題が続いているんだね。

 梅田記者  米軍基地は日米地位協定で米軍に管理が認められています。日米両政府が自ら決めた5・15メモの規定すら守られなくなれば、沖縄の基地負担は際限なく広がってしまいます。

 一方で、5・15メモは日本政府関係者や在日米軍高官などが秘密裏に合意したもので、県民の意思が反映されていない問題もあります。沖縄国際大の前泊博盛教授(安全保障論)は「拡大解釈ができる5・15メモ自体が問題だ。県がアクションを起こし、拡大解釈を許さない使用協定が必要になる」と指摘しています。

 地元自治体の意見も取り入れながら、基地の使用条件を明確に規定する新たな取り決めを定める必要もあります。