保革合同が団結できなかった砥板芳行陣営 石垣市長選を振り返る


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石垣市議会野党市議と政策協定を結ぶ砥板芳行氏(中央)。だが市議会で対極の立場にいた砥板氏と野党の合流に革新支持層からの反発は大きかった=1月21日、石垣市真栄里の選挙事務所

 【石垣】任期満了に伴う石垣市長選(2月27日投開票)は、現職の中山義隆氏(54)が、新人で前市議の砥板(といた)芳行氏(52)を破り4選を果たした。石垣市長選史上初となる保革合同候補となった砥板氏に対し、中山氏は自公の推薦を受けながら従来通りの選挙戦を展開した。昨年末から約2カ月に及んだ両陣営の選挙戦を振り返る。(西銘研志郎)

 三つどもえとなった2018年の前回市長選。革新候補と、保守ながら“反中山”を掲げた候補の得票を足すと1万4千票余となり、中山氏の得票1万3822票を上回っていた。革新系野党市議や一部保守などが擁立した砥板氏にとって、1万4千票を取ることが当選の最低条件だった。だが得られたのは、1万2307票にとどまった。

 自衛隊配備計画を推進してきた砥板氏は、市議会で野党と対極の立場にいた。砥板氏擁立当初は野党市議の半数が反発、野党会派「ゆがふ」は独自候補擁立の動きまで見せた。仲介のため照屋義実副知事が石垣入りするなど、県政サイドも野党団結にてこ入れを図った。

 砥板氏とゆがふが結んだ政策協定には、名護市辺野古新基地建設反対の文言まで組み込まれた。それでも革新支持層からは野党市議が独自候補を出せず、保守色の強い砥板氏を擁立したことへの不満が渦巻いていた。

 次第に砥板氏は、保守のイメージを抑えていく。砥板氏個人の自衛隊配備計画への考え方などは、選挙戦で表に出なかった。こうした動きは保守支持層が離れる一因となった。内部からも「陣営は『保革』ではなく、もはや『革新』だ」との声も上がった。

 選挙後、野党市議の1人は「前回の市長選で革新が取った9千票余りを超えたのは事実だ。今後はどうなるか分からないが、保革合同の一定の形は示せた」と語る。だが陣営の保守は「保守、革新のどちらの支持層にも浸透できなかったことが敗因だ」と振り返った。