新型コロナウイルスの影響でローンの返済が困難になった個人の債務(借金)を減免する制度の利用が低調だ。沖縄弁護士会(畑知成会長)によると、減免する特定調停が成立したのは、1日時点で県内3件にとどまる。対象となる債務の発生期間が限られているといった問題もあり、同会は期限延長などを求める意見書を出した。
2011年の東日本大震災を機に、自然災害の被災者の生活再建を支援する「債務整理ガイドライン」が策定された。20年にガイドラインが改定され、新型コロナの影響を受けたケースも対象となる特則ができた。
減免制度の対象は、20年2月1日以前の債務と、同年2月2日~同10月30日までに新型コロナの影響による減収で借りた債務。債権者の同意を得た上で弁護士の支援を受けて簡裁に特定調停を申し立て、債務が減免される。
適用されれば、一定の財産を手元に残せる。自己破産と違ってブラックリストに登録されないなどの利点もある。県内で成立した事案には数百万円が減免されたケースもあったという。
沖縄弁護士会が1日付で出した意見書は、制度を使った債務整理が進まない理由として制度の周知が不十分であることや、一部の債権者が制度を尊重しない対応をとっているなどの問題点があると指摘。円滑に運用するために国による指導・調整を求めた。
さらに、20年10月31日以降に発生した債務が制度の対象外となっている点も問題視。コロナの影響が長期化し、債務者が新たな借り入れをしているとし、20年10月31日以降に発生した債務も対象とするよう、改定を訴えた。
(前森智香子)