<焦点インタビュー>空飛ぶクロネコ導入「物流の2024年問題」対策とは? ヤマト運輸・梅津克彦執行役員に聞く


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2024年4月に開始する貨物専用機による物流事業を説明するヤマト運輸執行役員の梅津克彦氏=3日、那覇市の琉球新報社

 ヤマトホールディングス(東京)は1月、貨物専用の航空機(フレーター)を自前で導入し、そのうちの1機を那覇―羽田・成田間に就航させることを発表した。運航開始は2024年4月で、連携する日本航空(JAL)傘下のジェットスター・ジャパンに運航を委託する。那覇空港を拠点とした沖縄国際貨物ハブ事業にも携わってきたヤマト運輸執行役員の梅津克彦氏に、貨物専用機導入の背景となった「物流の2024年問題」や、増大する物流需要などを聞いた。

―貨物専用機の初導入を発表した。

 「国の働き方改革の一環で24年4月から、トラックドライバーに時間外労働時間の上限適用が制度化される。ヤマトの宅急便は長距離輸送の幹線部分を、地元のトラック事業者に担ってもらっている。中小事業者が多いこともあり、残業時間の上限が設けられる中でドライバーを確保してこれまでの仕事量に対応していくのは難しい。この長距離輸送に規制の影響が出ると、配送先に商品を届けるラストワンマイルにも影響してくる」

 「物流全体を考えた時に、制度が変わったからといってインフラを変えるわけにはいかない。EC市場の成長で物流環境は大きく変化している。ワンクリックで世界中に情報が飛び交い、それに応じて確実に迅速に物を動かすサプライチェーン(供給網)が求められている。eコマースのネットワークを末端までどのように維持していくか。24年以降の輸送力確保が課題となる中で、一つのツールとして検討してきたのがフレーターだ」

ヤマトホールディングスが那覇空港などに就航させる貨物専用機の機体イメージ(ヤマト運輸提供)

―貨物専用機の導入は大きな投資になる。

 「海外では、国内の物流を航空機で運ぶのは一般的だ。日本でも規制が緩和されてきたのと、輸送機能の強化として内製化ができるのか費用面など事業スキームを数年かけて検討してきた。フレーターで全てを解決するわけではない。既存のトラックや船、列車もある中で航空も含めて物流の選択肢を提示する。全体最適に特化する。国は物流のコードシェアという方向性を示して進めていこうとしているが、それを先取りしていく」

―陸送でつながっていない沖縄に就航させる判断については。

 「3機を導入し、新千歳、北九州、那覇の3空港と羽田・成田と結ぶ。24時間飛べる空港なのを考慮している。沖縄については2011年に那覇空港の物流ハブ事業に参画し、国際クール宅急便を開始した。その時に万国津梁が刺さった。沖縄は古くからグローバル化され、今も日本の中でアジアのゲートウェイ(玄関口)になっている。海外に進出するヤマト運輸の事業に、沖縄の地政学的な優位性をどう取り入れていくかをずっと考えてきた。貨物専用機の導入は新しいことを始めるのではなく、元々あった理念で進んでいる」

 「コロナの影響で那覇空港の国際線が停止し、沖縄ハブが止まってしまった。それでもわれわれは一度始めた事業を撤退はしない。フレーター事業は国内輸送だが、将来は沖縄から海外への就航も念頭に置いていきたい。国際クール便事業も、当初は沖縄から海外に出す産品といえば黒糖くらいだったのが、農業の6次産業化と合わせた沖縄発の物流などを視野に入れられるようになってきた。航空輸送で沖縄の商圏を拡大し、沖縄振興、地方創生に寄与していきたい」

(聞き手 与那嶺松一郎)