2020年の国勢調査では、沖縄の人口は前回15年調査比2・4%増の146万7480人で、増加率は東京都の3.9%に次ぐ全国2位だ。
全国で少子高齢化が進む中、沖縄では人口増が続く。1人の女性が産む子どもの推定人数「合計特殊出生率」の19年データでは、全国平均1.36人だが、沖縄は全国で最も高い1.82人だった。沖縄の人口動態を研究する早稲田大の山内昌和教授(地理学)は「沖縄は若い人が多く、本土と比べるとあまり高齢化していない」と指摘した。
山内教授は要因として、「沖縄の人の理想とする子ども数は全国よりも多い」と「家系継承が父系の嫡子(長男)に限定される家族形成規範の存在」「復帰前の米軍施政下時代、適切な避妊の手段が広まっていなかった」ことを挙げた。
山内教授らの研究グループは08年と09年に那覇市と八重瀬町内で既婚と未婚女性に対するアンケートを実施、3062世帯から回答を得た。本土では希望子ども数は2人だが、県内の両地区では3人との回答が多かった。40~69歳の既婚女性の調査では、本土の平均子ども数は2.1人だが、両地区は2.9人と多かった。トートーメー(位牌)を継ぐのは長男とする社会的規範が根強くあり、子どもが増えやすい背景もあるとした。さらに県外では1948年に人工妊娠中絶が合法化されたが、復帰前の沖縄では米軍が許可しなかった。
これらの要因などがあり、沖縄と本土では、出生率と死亡率が変動し、人口動態が「多産少死」から「少産少死」に変化する「人口転換」の完了に差があった。本土の合計特殊出生率は70年代から長期的な人口維持が可能となる「人口置換水準」を下回ったが、沖縄では90年まで維持した。
他都道府県に比べて高い出生率に支えられてきた沖縄の人口増だが、国立社会保障・人口問題研究所(社人研)の推計では25年ごろがピークで、30年代から全国的な流れと同様に人口減社会に突入する見込みだ。
山内教授は「(長男を優先とする)沖縄の人の意識も変化してきた。経済状況の停滞もあり、これから出生力が劇的に上がるとは想定しづらい」と分析した。
県は人口減社会を回避するため、2013年度に「県人口増加計画」を策定した。計画は35年に人口150万人、50年には160万人、そして2100年には200万人台という目標を設定したが、この増加ペースを目指すのは現実的ではないという見方も強かった。
県は19年度に策定した後継計画「沖縄21世紀ビジョンゆがふしまづくり計画(沖縄県まち.ひと.しごと創生総合戦略)」で、「人口増」の名称を省き、方針転換をした。
県企画調整課の担当者は「今は『産めよ、殖やせよ』の時代ではない。これからはできるだけ人口維持に努めながらも、たとえ人口減になっても生活の質を維持して住民が暮らしやすい持続的な地域づくりを目指している」と述べた。
(梅田正覚)
(第1部おわり)
(第2部は4月から開始します)